この6月、44番目の相撲部屋が創設された。元関脇嘉風の中村親方が、茨城県にある二所ノ関部屋から独立、両国国技館近くの旧陸奥部屋の建屋を借り受けてのスタートだ。もともとの内弟子だった十両の友風、五月場所の好成績で新十両に昇進した嘉陽など、8名の力士たちとの新生活が始まった。
「相撲部屋を持つのが大変なのは当たり前です。人を預かるわけですから、織り込み済みですよ。自宅部分の自分の部屋はまだ散らかってますが(笑)。順調にスタートが切れました」
中村親方は意気揚々と語る。現役時代から相撲という競技をアスリートの視点で捉え、トレーニング方法や栄養学を理論的に学び、実践。その結果、大きくない体ながら32歳で新三役に昇進し、土俵を沸かせる“いぶし銀”の存在となる。しかし、引退は突然だった。故郷大分県でのPRイベントで大ケガをし、2019年9月に無念の引退。燻っていた相撲への情熱が、今、再燃している。
「現役時代から『なぜ相撲部屋では1日2食なのか』『稽古は早朝だけ。本場所の取組時間に体の動きがマックスになるような稽古時間を設定できないものか』と考えていたんです」
アスリートに重要な3大原則として「運動・栄養・休息」がある。中村部屋では1日3食で栄養を摂取し、1週間のうち5日間は従来の相撲の稽古とトレーニングを、それも朝と夕方の2回に。2日間は完全休養を取るという。綿々と続く慣習的な相撲部屋生活には囚われない、いわば“嘉風流”だ。大相撲の伝統を、令和の現代にすり合わせた新しい試みに挑戦している。
「今までの自分自身がそうでしたが、結果が出なかったら、また“トライ&エラー”です。そこで修正すればいい。門限も特に設けずに、自主性に任せる。ただ、師匠として監督責任はありますから、必ず帰宅時間の連絡を入れることが条件。『今日は、はみ出します!』って『はみ出す』を合言葉のようにしてます(笑)」
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