ウクライナ“判定勝ち”の可能性

小泉 悠 東京大学先端科学技術研究センター准教授
砂川 文次 作家

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F-16戦闘機はゲームチェンジャーになりえない

 ――ロシアがウクライナへの侵攻を開始してから2年半を迎えましたが、終わりが見えません。ゼレンスキー大統領は8月4日、供与されたF‐16戦闘機が到着し、ウクライナ国内での運用を始めたと発表しました。この動きについて、お二人はどう考えますか?

 砂川 F‐16の供与で戦局が大きく変わるとは思えません。正直、私は軍事技術的な意味でのゲームチェンジャーは存在しないと思うんです。問題はどう使うか。

 小泉 まったく同感です。戦車が供与されたときと同じで、当時も「(ドイツの)レオパルトⅡだったら(ロシアの)T‐72に勝てるのでは」という楽観論があったわけですが、スペックの問題だけではなく、操縦する人の練度もあるし、何両投入されるかという有形無形の要素によって決まってくるものです。F‐16の場合、ロシアの領土奥深くまで入り込む攻撃能力になるのか。あるいはロシアの戦場上空における航空優勢獲得能力になるのか。はたまた都市防空能力になるのか。どの能力に対してF‐16を当てはめるのかという問いになってくると思います。ただ、現状では、供与数が少なすぎるため、おそらく決定打にはならないでしょう。

ウクライナ軍に供与されたF‐16戦闘機 Ⓒ共同通信社

 砂川 現状では、防衛あるいは攻撃などで補助的に使うので精一杯というところでしょうか。

 小泉 ただ、供与国のひとつであるオランダは、ウクライナ軍による越境攻撃に際してF‐16の使用を認める考えを示しています。もし長距離ミサイル「ストーム・シャドウ」を搭載してロシア国内を攻撃してもいいと認められたら、シャイコフカ空軍基地やバルティモール空軍基地などロシアの主要な飛行場を潰せるかもしれない。F‐16の数が揃えば、航空優勢のあり方に変化が出る可能性もあります。

“越境攻撃”の理由とは

 ――8月6日には、ウクライナ軍がロシア南西部クルスク州への“越境攻撃”を開始しました。

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source : 文藝春秋 2024年10月号

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