チェリー・ボム(サクランボ形の癇癪玉)という単語を聞くと、Jではじまる名前が3つ、頭に浮かぶ。
ジョー・ペシ、ジョン・ベルーシ、ジャック・ブラックの3つだ。
3人とも破裂する力が図抜けている。爆発力というより暴発力。鼠花火の場合はめまぐるしい回転力が特徴だが、こちらの癇癪玉は要注意だ。可愛げはあるが、危ない。危なくて眼が離せない。
なかでは、ブラックがちょっと異質だ。瞬間的に切れる芝居は朝飯前でやってのけるが、ストライクを投げろと言われると、針の穴を通すような緻密さで球をコントロールする。癖のある体質や生理に依拠するだけでなく、それらを自在にブレンドして、面白いカクテルを作る。敏捷だし、歌はうまいし、楽器も弾ける。
ジャック・ブラックは、1969年、カリフォルニア州のサンタモニカに生まれ、ハーモサ・ビーチで育った。その名を一気に高めたのは、やはり『スクール・オブ・ロック』(2003)だろう。少し前の『ハイ・フィデリティ』(2000)で、レコード屋のワイルドな店員を演じたときの芝居が助走路になった。
『ロック』のブラックは、落ちこぼれロッカーのデューイを演じている。自身が結成したバンドから冷たく追い払われた彼は、旧友のアパートに居候を決め込んでいたが、名門小学校でまんまと代用教員になりすます。そしてなんと、お利口さんぞろいの子供たちにバンドを結成させ、地区コンテストに挑もうとする。
しかし、とりすました校内で、モグリの偽教師にそんな暴挙が可能なのか。無茶な設定だが、リチャード・リンクレイター監督はブラックの疾走力と瞬発力を疑わず、一気に押し切ってみせる。
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