逸見政孝 これが夢だったらな

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フジテレビのアナウンサーとして人気を博した逸見政孝(1945〜1993)は、フリーとなってからも『夜も一生けんめい。』(日テレ系)、『たけし・逸見の平成教育委員会』(フジ系)など、高視聴率番組の司会を担当。だが胃がんにより、48歳の若さで亡くなった。娘の愛氏は2024年、父親が亡くなった年齢を超えた。

 私が生まれたのは父がフジテレビのアナウンサーとして『3時のあなた』の司会を務めていた昭和50(1975)年のこと。家では無口だった父との間で、子どもの私がシェアできた数少ない話題が映画でした。父は幼いころから映画が大好きで、特にチャップリンと黒澤明監督がお気に入り。

 そのため、小学生の頃から、父が学生時代に通っていた早稲田の小さな映画館へチャップリンの映画を観に行きました。座席はなく、座布団が敷かれているだけの劇場で、父の膝の間にすっぽり入って観たのは『独裁者』。今思えば小学生には難しいテーマだった気もしますが、そんな父との時間が楽しかった。

逸見政孝 Ⓒ文藝春秋

『FNNスーパータイム』のキャスターを務め、昭和63年に独立。以降、『クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!』『クイズまるごと大集合』など、各局の番組に忙しなく出演していました。

 父のがんが判明したのは、私がイギリスに留学していた高校時代。最初の手術を終えたあと、「話があるからいらっしゃい」と父の部屋へ呼ばれ、手術跡を見せてもらいながら「実はね」と説明を聞きました。

 胃がんを公表した平成5(1993)年9月の記者会見は、各局のワイドショーで生中継されたので、母と一緒にテレビで見ていました。

「本当のことを申し上げます。私がいま侵されている病気の名前は、がんです」

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source : 文藝春秋 2025年1月号

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