『見えない未来を変える「いま」』ウィリアム・マッカスキル/みすず書房
『Science Fictions』スチュアート・リッチー/ダイヤモンド社
『トランスジェンダーになりたい少女たち』アビゲイル・シュライアー/産経新聞出版
シリコンバレーの効果的利他主義者は、「かわいそう」などの感情を排して、コストに対してもっとも大きなリターンを達成している慈善団体に寄付すべきだと主張する。『見えない未来を変える「いま」』では気鋭の哲学者マッカスキルが、効果的利他主義をさらに“進化”させた「長期主義」を唱える。
長期主義者は、現在の人間よりも未来の潜在的な人間のほうがはるかに多いのだから、道徳や倫理は未来の利益を最大化するように書き直すべきだと考える。この新奇な思想では、太陽はいずれ寿命に達し、地球に生き物は住めなくなるのだから、テクノロジーの発展を加速させて、未来の人類が宇宙で繁栄できるようにすべきだということになる。火星移住計画を進めるイーロン・マスクをはじめ、いまやテクノ・リバタリアンのあいだで大きな影響力をもつようになった。
『Science Fictions』はSFのことではなく、科学がフィクション(つくり話)になってしまった学術研究の現状を批判的に論じる。とりわけ問題が多発しているのは心理学で、自分の論文を学術誌に掲載させるために、研究者が駆使する詐術的テクニックが詳細に解説される。こうした論文は他の研究者が結果を再現することができず、「再現性の危機」が学問の土台を揺るがしている。
すでに本欄で紹介したが、『トランスジェンダーになりたい少女たち』を「今年の1冊」から外すことはできない。アメリカ社会で、恵まれた家庭の(主に白人の)少女たちが次々と性自認に違和を訴えているという。著者の主張には一部に強い批判があるが、読者が翻訳書を読んだうえでどちらが正しいかを判断するのではなく、翻訳出版そのものを阻止しようとした運動は、この国の言論・表現の自由に大きな問いを突きつけた。大手メディアが腰が引けるなか、この問題を正面から取り上げた雑誌『情況』2024年夏号「特集トランスジェンダー」の意欲的な姿勢が際立っていた。
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source : 文藝春秋 2025年1月号