
この「名文珍文年賀状」では、私に届いた年賀状を紹介してきた。私が連載を持っていた雑誌に、32年も続けている。連載誌が変わってもである。あまりに面白くて笑えるものが多く、匿名で、読者に初笑いを届けようと考えたのだ。
ところが、出す方も受け取る方も、年々トシを取る。40代の頃は血気盛んで、爆笑ものが多量に届き、選ぶのに苦労したほどだ。50代になると、企業や組織の屋台骨を背負っている意識、また女性の多くには、新分野で何かを始める高揚感が匂っていた。
60代になると「ついに還暦」という文言が増え、自分の先々を読みとっているような一言が増えた。あとは男女共に、孫、孫、孫である。写真付きで、視線が内向きになってきた印象だった。
そして今、70代。体の衰えを具体的に書いてくるようになり、全然笑えない賀状の多いことよ。辛気臭くて、名文でも珍文でもない。愚痴文。
が、私はこれら愚痴文賀状を読むとすごく安心する。「アラァ、この人も息切れするのね、私もよ」「エーッ、彼も外出が億劫になり始めたんだ! 私だけじゃないんだ」「へえ、腰痛がひどくて動けない。私は異次元の肩こりで病院通いよ」と、「痛いのは自分だけじゃない」と思えて、力が湧くではないか。
その一部をご紹介する。賀状をめくれどもめくれども、70代の愚痴。同年代はきっと元気が出る。

・元仕事関係者(70代 男性)
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source : 文藝春秋 2025年3月号