長谷川慶太郎、安部譲二、ジーン・バッキー、和田一夫、イマニュエル・ウォーラーステイン

蓋棺録

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偉大な業績を残し、世を去った5名の人生を振り返る追悼コラム。

★長谷川慶太郎

 経済評論家の長谷川慶太郎(はせがわけいたろう)は、常に日本経済の将来を高く評価して、現場で苦闘するビジネスマンに圧倒的な人気があった。

 1979(昭和54)年、第2次オイルショックが日本を襲ったとき、「日本に石油はある。日本経済はさらに発展する」と断言して的中させる。これを切っ掛けに注目されるが、日本向け原油にかけられた海上保険を丹念に調べ、十分な石油備蓄があることを知っていたという。

 27年、京都市に生まれる。父親は製薬会社の技術者だった。「鴨川の土手に近い住宅が最初の記憶です」。親戚に技術者が多かったこともあり、旧制大阪高校から大阪大学工学部に進学した。在学中は学生運動に深入りし、枚方事件に連座して逮捕されている。

 しかし、運動から離脱して上京し、新聞記者や証券アナリストをへて、雑誌や新聞に執筆するようになる。このころからぶっつけで電話送稿していた。特に、データを駆使した経済分析で注目され、韓国経済や中国経済について著作を刊行する。

 81年に文藝春秋に寄稿した「世界が日本を見倣う日」では、軍事小国を選択した日本だからこそ世界経済をリードするようになったと論じて、文藝春秋読者賞を受賞。83年には、同論文を中心にまとめた単行本が、石橋湛山賞を受賞した。

 旅行中でも英語、ドイツ語、韓国語の新聞や雑誌を持ち歩いて読み込み、常に新しい情報を読者に提供した。苦労人で取材に来た新人の記者や編集者にも丁寧で親切だった。80年代の中ごろには、ビジネスマンが競って長谷川の著作を読み、講演依頼は年に200件を超えた。

 しかし、さすがに90(平成2)年の株価急落は予想できなかった。前年暮れに「日本経済に問題があるなら教えて欲しい」と断じたが、この発言が活字になったころ、株式市場は暴落していた。

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source : 文藝春秋 2019年11月号

genre : エンタメ 読書