苦しくなったらまず息を吐くことから
前回にも書いた通り、「過呼吸」という症状だけで死ぬことはない。もし過呼吸に陥ったら、とにかく「落ち着くこと」を心がける。
落ち着くためにすべきことは、呼吸を整えること。
呼吸を整えるためにすべきことは、息を吐く時間を長くすること。
息を長く吐くには、口をすぼめて細く吐く――。
「苦しくなったらまず息を吐くことから始めます。先に吸おうとすると苦しくなるので、最初は吐くことから始めます。そのあとで2秒かけて鼻から息を吸い、6秒かけて口から吐く。また鼻から2秒かけて吸い込んだら、今度は8秒かけてゆっくり吐く。この時、口の先をすぼめて、呼気が一気に出て行かないようにして、少しずつ吐くのがコツです。人間の体は息を吐く時間が長くなると副交感神経が優位になり、リラックスしていくようにできています。 鼻から2秒吸って、口をすぼめて8秒吐く、を繰り返すことで、過呼吸は自然に治まっていきます」
“口すぼめ呼吸”と“2秒吸って8秒吐く”
この「口すぼめ呼吸」は、じつは慢性閉塞性肺疾患(COPD)のリハビリの一つ。COPDは気道が虚脱して塞がる傾向になるため呼吸が苦しくなる。そんな時に「口すぼめ呼吸」を行うと気道に圧がかかって気道が開くので呼吸がしやすくなる。そんな呼吸法が、過呼吸状態の人にも役に立つのだ。
「この“口すぼめ呼吸”と“2秒吸って8秒吐く”のセットは、過呼吸以外にも、緊張状態を和らげる作用があります。プレゼン前の緊張状態の時などに試してください」
繰り返すが、過呼吸状態での“口すぼめ呼吸”は、まず“吐き切る”ことから始めることが重要だ。過呼吸に陥った人はどうしても「吸おう」としてしまいがちだが、先に吸ってしまうと余計苦しくなってパニックを増幅しかねない。
ただでさえ苦しい時に、息を吐くのは勇気のいることなのだが、その「ひと吐き」がラクになる近道であることは、ぜひ覚えておいてほしい。
日頃深呼吸をするときも、いきなり吸い込むのではなく、「まず吐く」から始めることを意識しておくといいでしょう。