「王族の末裔」を名乗り、全国で金を騙し取っていた男がいた。 

 7月28日、福井地裁は王見禎宏被告(67歳)に懲役4年6カ月の実刑判決を言い渡した。仲間と共謀し、“王国”を建国する名目で福井県の女性らから6150万円を騙し取った詐欺罪だった。 

 実際に集めた金はより多く、「09年から18年の間に32億円を集めた」と判決で認定された(7月29日、毎日新聞福井県版)。 

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「私の祖先は孝明天皇の財産をバチカンに……」

 2013年5月下旬――。 

 東京のホテルニューオータニで、王見被告は仲間3名と共に都内の会社社長と面談していた。 

「王見家には、孝明天皇から伝えられてきた伝承があり、私はその伝承を継承すべき立場にいる。私の祖先は、孝明天皇の財産をバチカンに信託して守ってきたのです」 

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 王見被告は会社社長にそう切り出し、 

「日本は年末に経済破綻し、円は紙クズになります。私はイギリス政府承認の下、イギリスに『信託統治領ブライトン王国』を建国し、信託していた財産を引き出して王見ファンドを作ります」と続けた。 

 王見被告の話がひと通り終わると、仲間が前のめりに、 

「社長もお金を持っているんだったら、預けたほうがいい。どーんと行きましょう!」と誘って来たという。 

 明治天皇の父に当たる孝明天皇の“伝承”の内容は、後日メールで教えられた。 

「将来、我が国は外交問題に振り回され、大きな戦いに巻き込まれる。戦いの後、皇室に大変困った問題が起きる。その時、海外に『王見』の名を述べよ。世界の大変地位の高い宗教家に出会うであろう」……。 

 会社社長は「荒唐無稽」として出資を断ったが、信じた人が多くいたのだ。