1ページ目から読む
3/3ページ目

 その目安となるのは、YouTubeにおけるIZ*ONEのミュージックビデオの再生回数だ。それは以下のようになる。

表1. YouTubeにおけるIZ*ONEのミュージックビデオの再生回数

 発表時期が異なるので新しい曲ほど再生回数は少なくなるはずだが、表を見てわかるとおり韓国語曲が日本語曲を圧倒している。今月発表されたばかりの韓国語曲「Panorama」は、2年近く前に発表された日本語デビュー曲「好きと言わせたい」をすでに追い抜いた。

K-POPとの圧倒的な差を埋められるか?

 この再生回数に、繰り返し聴きたい(観たい)と思わせる楽曲(MV)の力が反映しているとシンプルに捉えれば、その差は歴然としている。

ADVERTISEMENT

 日韓のこの違いは、IZ*ONEのメンバーにも顕れている。HKT48の活動を中断し、2年半の限定で韓国に渡った宮脇咲良は、7月に自身のラジオ番組で「腹筋ができた」と話した(bayfm『今夜、咲良の木の下で』2020年7月8日)。それまで7年間もHKT48で活動していたにもかかわらず、2年弱の韓国の活動で身体に変化が生じたのである。もちろんそれはダンスの質や日頃のトレーニングの結果だ。

【動画】IZ*ONEの最新曲「Panorama」MV
 

 AKB48がNiziUやK-POPと音楽的に伍してやっていくには、楽曲の制作に加え、メンバーたちのトレーニングまでしっかりする体制を整えなければならない。こうしたことができるかどうかの勝負となる。それができないのであれば、これまでどおりパーソナリティを軸とし、ローカルアイドルとして小さく細く続けるしかない。もちろんそれでAKB48のような大所帯を今後も維持できるかは、わからないが。

“AKB商法”はドーピングでしかなかった

 K-POPの勢いは、AKB48だけでなく、他の日本の音楽系プロダクションにもダメージを与えつつある。

 LDHはE-girlsを解散し、90年代にSPEEDを生んだライジングのフェアリーズは活動停止となったことはすでに触れた。エイベックスは、3年前に竣工したばかりの自社ビルを売却し、多くの社員のリストラをする予定だ。嵐の活動休止を控え、他グループからも離脱が相次ぐジャニーズは、ネット対応したSixTONESとSnow Manが好調な滑り出しをしたことで、盛り返す兆しがやっと見えたあたりだ。

 握手会が当面できず、CDがいま以上に売れることがないなかで、音楽系プロダクションやレコード会社は業態の根本的な転換を求められている。しかし、AKB商法の反動はおそらくとても大きい。ビジネスモデルをなかなか転換できなかった音楽業界は、いまだに売上の7割ほどをCD・DVD販売(フィジカル)に依存している。音楽売上の半分以上をフィジカルが占めるのは、4年前からもはや日本だけだ。

2013年にリリースされた『さよならクロール』(キングレコード)。初動売上は歴代1位の176.3万枚を記録した

 いつかは終わりを迎えるにもかかわらずCD販売に依存してきた日本の音楽業界にとって、握手券をつけてCDを延命させた“AKB商法”は結局のところドーピングでしかなかった。

 20年代の日本の音楽業界とは、10年代にキメ続けたドーピングの副作用と闘う時代だ。ソニーミュージックは坂道グループを手がけながらも、K-POP大手のJYPエンタとも手を組んでNiziUを大成功させつつある。吉本興業は、韓国大手の制作会社CJ ENM傘下のMnetと組んでJO1を成功させている。K-POPに助けてもらうレコード会社や制作会社こそが、20年代に生き残れるのかもしれない。

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。