「社会の破壊と人間の奴隷化」が始まった?
荒谷のデビュー作は『戦う者たちへ』(2010年)だが、昨年その第3版が出た。そこで増補された部分には、コロナ騒動を受けたところがある。そしてこれが、たいへんきな臭い内容なのである。
令和二年、世界では重要な出来事が起こった。いわゆる『コロナ騒動』だ。コロナウイルスそのものは全く問題ないにもかかわらず、コロナを利用して世界中を脅迫し、自分たちの利益獲得と支配体制を目論む極悪非道の連中がメディアを使って、社会の破壊と人間の奴隷化を開始した。
ここでも「ディープステート」的な世界観が明確に出ていて、頭を抱えてしまう。とはいえ、本書の“暴走”はこれで止まらない。
荒谷はさらに、「新しい生活スタイル」を推し進めて、神社の祭りやお盆の帰省などを阻み、日本の歴史・文化・伝統を根本から破壊しようとする者たちを「日本の真の敵」と断定。そして「これと戦うことが、真の国防である」と主張し、「真の日本の戦闘者」にたいして「行動する時が来た」と訴えかけるのである。
「靖国の英霊と初めて会話ができる」
ずいぶん物騒になってきた。とはいえ、その具体的な戦い方を聞くと、いささか拍子抜けする。
日本中に有り余っている休耕田を起こして田んぼを再生する。お祭りに参加する。世のため人のために働く。家族的経営の会社運営をする。お金やネット情報に依存しない。テレビは観ない。メディアの情報を無視する。コロナ騒動を扇動する悪人のもとでは働かない。奴らが振りまくリスクを無視する等々、日本文化防衛のためにできることはいっぱいある。(前掲書)
農業や祭りなどはともかく、後半は典型的な「ネットで真実を知った」者の考え方だ。ネット情報に依存しないと言いながら、フェイスブックを見るかぎり、ネット情報にはそれなりに影響を受けているのではないか。
それはともかく、一般的に考えれば、コストをかけている新聞やテレビの報道のほうが、出所不明のネット動画よりも、まともな情報を出しているとなりそうなものだ。ところが、本書を読み進めると、そのような合理性が一刀両断されてしまう。