昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載昭和事件史

「乗組員はスパイとも思える」「損害が誇張されている」終戦9年目、日本人水爆実験被害者にアメリカから向けられた言葉

「もしもあの時あの場所にいなければ…」第五福竜丸事件 #2

2021/02/28

「食べれば原子病にかかる」“原子マグロ”登場

 3月16日付夕刊では朝日が「マグロ漁船ビキニで原爆浴びる」を社会面トップで、毎日は「ビキニの水爆?実験で邦人漁夫三十三名被災」を1面左肩で追いかけた。毎日が社会面トップに載せた「売られた“原子マグロ” 食べれば被病 都内では一応押える」の記事はその後の騒動のきっかけとなったといえるだろう。(全2回の2回目。#1を読む)

◆ ◆ ◆

 1面所報、ビキニ環礁で原爆に遭遇した第五福竜丸には、同船が南太平洋で漁獲したマグロ、サメが積まれ、その一部は15日水揚げ、出荷されたが、この“放射能の洗礼”を受けた魚について東大名誉教授・都築正男氏は「食べれば原子病にかかる」と警告。事態を重視した(東京)都衛生局と中央市場では直ちに問題の魚を廃棄処分に付する一方市販に回されたものについて販売禁止の通告を発した。

“原爆マグロ”“放射能マグロ”への不安と恐怖が国民の間に広がった(朝日)

 3月17日朝刊の朝日には社会面3段で「築地で五百貫埋める 各地に流れる福竜丸の魚」の見出しの記事が。

 焼津からの“原爆マグロ”と一緒に築地魚市場に入荷、販売された魚は果たして人体に危険があるかどうか。東京都衛生局では東大と科研の協力で16日午後1時半から、市場内にガイガーカウンターを持ち込み、放射能測定を行った。問題のマグロは3尾。そのうち一番放射性物質がついていたものは6.2ミリレントゲン時。サメは約500貫(約1.88トン)あったが、そのうち最高は9ミリレントゲン時。もちろん販売中止となった。しかし、朝の売買でほかの約2万貫(約75トン)が残らずハケており、都内、近県各地にバラまかれてしまったので、いまとなっては検査の方法もない。衛生局では「このマグロのうち、一部には放射性物質が付着したものもある恐れがあり、16日に小売りの魚屋さんに出回ったマグロなどについては、よく洗ってから食べるように」と都民に要望した。

 魚市場では問題の魚542貫を同夜半、市場内の片隅に埋め、17日からは平常通り、セリ場も使うことになった。

 同じ話題を取り上げた記事に毎日は「原子マグロを土埋め」、読売は「原子マグロ土葬」の見出しを付けた。既に「原爆マグロ」「原子マグロ」が紙面をまかり通っていた。

事件は国際問題化した(朝日)

 事件はその後、国際問題、特に日米間の核管理と安全保障の問題として複雑に広がる。まず問題になったのは、第五福竜丸が死の灰を浴びたのが、アメリカが設定した「航行禁止区域」の中だったのかどうか。

 各紙ともこの問題の記事であふれた3月17日付朝刊。朝日社会面のトップは、海上保安庁が乗組員らの話から「ビキニ被爆は禁止区域外」(見出し)とみているというニュースだった。

調査班が一様に驚くことは…

 朝日の同じ紙面には「頭髪も抜け始める 東大に入院の増田、山本両君」の記事も。3月17日付夕刊では、アメリカのダレス国務長官が「不幸な事件だ」と述べたことが各紙に載った。

 毎日は社会面で厚生省と東大などの調査団が焼津で現地調査を始めたことを報じたが、「余りに無関心な地元民」の脇見出しでこう書いている。