ハワイ出身のアメリカ人、ルース・マリー・ジャーマンさんは、首都圏を中心としたJRの駅や駅ビルの清掃を行うスタッフとともに、訪日外国人観光客への「英語対応力アップ」を目指して、シンプルで簡単な英会話をレクチャー中! JR東日本の清掃スタッフが実践する「今日から使えて、外国人の気持ちがわかるようになる」フレーズを紹介します。

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「あなたはカバですか?」

「すみません!」という声がけに続き、「あなたはカバですか?」と日本語で表示されたスマホの画面を見せる外国人。突然、この画面を見せられた新潟市内の古町(ふるまち)商店街の店員さんは、驚いたに違いありません。これは初来日中の私の友人が、動物のカバが大好きな旦那さんのためのお土産探しをしていた時の爆笑エピソードです。彼女がスマホの翻訳ソフトに吹き込んだ英語は「Are there Hippos?」。日本語に訳すと「カバはあるの?」というフレーズなのですが、英語が変に訳されて「あなたはカバですか?」と表示されてしまったのです。

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 画面に表示された日本語が読めない友人は不思議そうに「どうも店員さんに伝わらなかったみたいよ」と報告してきたのですが、その理由がわかると、2人してお腹が痛くなるほど大笑いしてしまいました。彼女にとって1人買い物体験の救いになったのは「すみません」と声をかけて通じたこと。「すぐにこっちを向いてくれたよ! 会話ができた感じですごく嬉しかった!」と自慢している彼女を見て、私も嬉しかったのです。観光客にとって日本人と「通じる」ことが旅行中の楽しみの1つだなと実感した経験でした。

JR上野駅で清掃にあたるスタッフに、ルーシーさんが簡単な英会話を3分間でレクチャー ©文藝春秋

 外国人を顧客に「もっと英語でのサービスを提供できるようになりたい」という思いを持つ自治体やサービス業界の企業は日本中で増えています。そんな中、私はいま、「株式会社東日本環境アクセス」(以下、アクセス)さんというJR東日本のグループ会社の中でも首都圏を中心とした駅や駅ビルの清掃を行っている企業と「英語対応力アップ」につながる取り組みを始めています。訪日外国人観光客から、駅などで働く約3800人の清掃スタッフの方々は多岐にわたる質問を受けているのです。おもてなしの心が伝わるような簡単な英語をスッと話せるように、私がアドバイザーを務めています。

 この活動を通して、私自身も日本のサービス業の定番フレーズを英語でどう伝えればいいのか、深く考えるようになりました。どちらかというと受験英語を正しく話すよりも「言われた外国人はどういう気持ちになるのか」という点が重要であると思うようになったんですね。