ドナーは身元を開示するドナーと非開示のドナーに分かれます。すべてのドナーについて、人種、民族、身長、体重、肌質、瞳の色、髪の色、血液型、サイトメガロウィルス(ヘルペスウィルス)抗体の有無、妊娠実績の有無、心理的検査の結果がわかります。さらに、子どもの頃の写真、声など詳細なプロフィールを開示するドナーもいます。日本では購入者の69%が身元を開示するドナーを選び、そのうちの98%が詳細プロフィールを開示しているドナーを選びました。
ただし、現時点では日本人のドナーは1人だけで、身元を開示していません。したがって開示ドナーを希望する場合は外国人ドナーから選ぶしかありません。最も多く選ばれるのはアジア人か、白人でも髪の毛と瞳の色が黒色もしくはダークブラウンの人です。これはみなさんに葛藤があって、親と子どもの外見があまりに異なると、日本では周りの人からいろいろ言われてしまう。子どもが生きにくくなってしまいかねない。そうなることを避けたいので、少しでも自分に似た子どもが生まれるようにしたいのです。
子どもに真実を伝えるべきか?
精子バンクで購入した精子によって誕生したということを子どもに伝えるかどうか。これに葛藤する人もいると思いますが、クリオスを使う人は、真実を伝えるという意向の人が大部分です。伝えるか、伝えないかではなく、いつ、どうやって伝えればいいかという質問はよく受けます。私はなるべく子どもが小さいうちから分かる言葉で伝えることをお勧めしています。
1人のドナーから生まれる子どもの数を管理しなければいけないので、購入した方には妊娠登録を義務づけています。また、国内では同じドナーの精子で10家族までの出産となるよう、販売の時点から管理しています。
伊藤さん担当の出産第1号はレズビアンのカップル
――既にクリオスが販売した精子で、国内で赤ちゃんが誕生しているのですね。
伊藤 私がやりとりさせていただいた中での出産第1号は昨年4月、レズビアンのカップルでした。最近1歳になった姿の写真を送ってくださって、成長している様子が嬉しかったですね。その後、シングルやパートナーが無精子症の方も出産していますし、現在妊娠中の方も何人もいます。
レズビアンのカップルがお互いに同じドナーの精子で1人ずつ産んだ例もあります。こういうきょうだいの誕生のし方もあるのだなと、新たな気付きになりました。シングルの姉妹が揃って購入し、治療に取り組んでいるという例もあります。精子提供を希望する女性のお父さんやお母さん、つまり孫を待ち望んでいる方々からご連絡をいただくこともあります。ご家族からの理解は必要ですし、特にシングルの方は一緒に子育てを行う人が身近にいると安心です。