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「数年以内に君たちは人生最大の失敗をする」立花隆が“6時間の最終講義”で東大生に語っていたこと

『二十歳の君へ』より #1

2021/06/26

 40、50までは自分の人生を振り返ってみたいなんて、考えもしませんでした。いつも、そのときどきの「今」を生きることに大忙しでした。60になったとき、はじめて、ああ、還暦か、もう60年も生きてきたのかと、それだけ長く生きてきたことに大きな感慨を持ちましたが、自分の人生全体を振り返ってみようなどという意識は持ちませんでした。

 60歳になったときがちょうど西暦2000年で、20世紀から21世紀への変わり目であると同時に、新しいミレニアムに入るという、1000年に一度の大きな時代の変わり目でもあったという巡りあわせのせいもあります。というのも、そのときはいくつかのメディアで歴史を振り返る大きな仕事に巻き込まれていて、また、大学での仕事で歴史の振り返りをいろんなかたちでやっていたということもあり、歴史を振り返ることそれ自体は大いにやっていたのですが、自分自身の歴史を振り返るということはあまりしなかったのです。

1996年、東京大学で講義をする立花さん ©文藝春秋

 というわけで、自分の70年に渡る人生全体をパッと振り返ってみるなんてことをあらためてしてみたのは、つい最近のことなんです。それはやってみると面白いものです。自分の人生のいろんな年代の持っていた意味があらためて見えてきます。20代半ばで社会に出るまでは、すべてが社会に出るまでの準備段階だったんだな、とか、社会に出ても最初の10年間は見習い期間みたいなものだったな、とか、大づかみな人生のスペクトル分析ができるわけです。それとともに、20代という年齢の持つ危うさが目に見えてきます。自分自身が20代に犯した失敗の数々も走馬灯のように目の前をよぎります。そういう経験を踏まえた上で、今からはっきり予言できることは、君たちの相当部分が、これから数年以内に、人生最大の失敗をいくつかするだろうということです。

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 失敗には取り返しがつく失敗と、取り返しがつかない失敗があります。君たちの失敗が後者でないことを祈るばかりです。

 実際問題として、たくさんの人が20代前半で一生取り返しのつかない大失敗をしているものです。例えば、オウム真理教に入って死刑囚になってしまった君たちの先輩たちなんかがそうでしょう。しかしあれはほんの一例で、20代前半で一生取り返しのつかない失敗をしてしまった人なんていくらでもいます。その多くが、自分では文句なしにいいことをしているつもりだった、というところが人生の悲劇です。20代前半というのは、そのような思い込みに基づく大失敗を犯しやすい年代なのです。