安倍晋三 首相
「最終日、秋葉原に立つよ。リベンジだ!」
AERA.dot 10月18日
名言、珍言、問題発言で1週間を振り返る。衆議院選挙の投票日を控え、各候補者の選挙戦もヒートアップ。会場・時間とも、事前告知は一切なしの“ステルス遊説”で全国を回ってきた安倍首相だが、相次ぐ「自民党優勢」の報道に自信を深めてきたのか、選挙戦終盤では堂々と告知するようになってきている。
そして選挙戦最終日となる21日、秋葉原での街頭演説を行うことを決めたのだという。7月1日、都議選最終日の街頭演説で「辞めろ」コールを浴びた安倍首相は「こんな人たちに負けるわけにはいかない!」と叫び、自民党は都議選で記録的な大敗を喫した。これまでの“ステルス遊説”もそうしたヤジを恐れてのものだった。
しかし、衆院選での街頭演説では「偏向ヤメろ」とか、ハートマークに「ガンバレ」と書かれたプラカードを掲げた支持者が、街宣車やテレビクルーの周囲に陣取り、「お前が国難」などのプラカードを持つ反安倍派をブロック。聴衆からヤジが飛べば、すかさず「選挙妨害だ!」と叫ぶ連係プレーが確立している(日刊ゲンダイDIGITAL 10月20日)。
18日には衆院選公示から初めてとなる都内での街頭演説をJR池袋駅前で行ったが、このときは5000人以上の聴衆が集まり、演説後には「アンコール」の声も飛んだという(日刊スポーツ 10月19日)。10月6日に行われた「自民党ネットサポーターズクラブ」の緊急総会に安倍首相が登場したときも、サポーターたちから大歓声が起こったという(毎日新聞 10月18日)。まるでアイドルと熱狂的なファンだ。
秋葉原での街頭演説について、安倍首相は高らかに「リベンジだ!」と叫んだそうだが、一体誰に対するリベンジなんだろうか? 都議選で自民党を大敗に追い込んだ小池百合子希望の党代表に対してだろうか? それとも「こんな人たち」に対してだろうか?
タレントでエッセイストの小島慶子氏は次のようにツイートしている。「政権の座についたら、政治家は自分を支持した人々だけでなく、しなかった人々の暮らしにも責任を負うことになる。だから選挙活動中の候補者が、自分を支持していない人たちに対してどんな態度をとるのか、嫌な質問をされたときにどんな回答をするのかをよーく見ておくことが大事だと思う」(10月18日)。安倍首相が秋葉原での街頭演説でどんな態度を取るのか、よく見ておく必要がありそうだ。
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安倍晋三 首相
「皆さん、この選挙は北朝鮮の脅威からいかにして国民の命と幸せな暮らしを守り抜くのか、それを問う選挙です」
産経ニュース 10月19日
JR池袋駅前での街頭演説で、安倍首相が真っ先に語った言葉。「国難突破選挙」と自らが掲げたキャッチフレーズどおり、「国難」北朝鮮の脅威について強調した演説だった。
また、北朝鮮の拉致被害者である横田めぐみさんの話題を取り上げ、ドナルド・トランプ米大統領から「シンゾー、分かった。ひどい話だ。この問題を解決していくためにも全面的に協力するよ」との約束を取り付けたこと、トランプ米大統領にめぐみさんの両親である早紀江さん、滋さんとの面会を頼んだことを明かした。
一方、拉致被害者の蓮池薫氏の実兄で「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会(家族会)」元事務局長の蓮池透氏は、東京21区で出馬した天木直人氏(新党憲法9条)の応援演説で「被害者を見殺しにしている」などと安倍首相を徹底批判した。また、「(トランプ大統領との面会は)意味がない」ともツイートしている(10月17日)。かつては「安倍首相ら政治家は『あらゆる手段で拉致被害者を取り戻す』と言ってきたが、具体的にしたことは制裁の強化ばかり。本当に取り戻すつもりなら、相手を分析して戦略を考えてほしい」とも発言していた(朝日新聞デジタル 8月23日)。
拉致被害者の蓮池薫氏はインタビューに対して「いつかは対話の局面になる。その時に備え、日本は水面下で拉致問題解決を求める姿勢を伝える努力が必要」と語っている(朝日新聞デジタル 9月17日)。「異次元の圧力」を訴え続ける安倍首相の主張とは真逆の内容だ。
北朝鮮の脅威と拉致問題の解決をアピールする首相だが、具体策はトランプ大統領だのみに見える。第一次安倍政権以降、拉致被害者の帰国も首相の訪朝も実現していない。選挙後、どのような策を講じるつもりなのだろうか?