《性犯罪にあいました》“セクハラ”を告発する投稿
「よくあるオンラインサロンのひとつだと感じましたが、トラブルもありました。それぞれの“局”では、企業から依頼されて仕事をすることもあったのですが、その仕事を引き受けても報酬が出ないということで一部の会員から不満が上がり、ネットでは“奴隷制”ではないかとも言われていました。
ただ、私はサロンを学びの場として捉えていたので、そこは気になりませんでしたね。むしろ、あらゆる分野の勉強を目的とした部活動を立ち上げたり、月に1度のオフ会に参加したりと交流を楽しんでいました」(同前)
サロン内で精力的に活動し、充実した日々を送っていたAさん。ところが、数ヶ月が経過した8月1日深夜1時頃、いつものように専用ページを閲覧していたAさんの目に、衝撃的な内容の投稿が飛び込んできた。
《実は、今年に入ってから、性犯罪にあいました。》
《「じゃあチューしよ?」と、【路上】で、突然私にキスをしてきたのです。》
「B子さんという若い女性による、はあちゅうサロンの男性会員から受けた“セクハラ”を告発する投稿でした。相手男性の名前は伏せられていたものの、どう対処するんだろうと1時間ほど眺めていたところ、突然その投稿がはあちゅうさんによって削除されたんです。
投稿から削除までの時間があまりに早かったことや、B子さんではなくはあちゅうさんが投稿を削除したことに強い違和感を覚えました。もちろんセクハラ告発自体は片側の言い分ですし、真偽はわかりませんでした。でも、運営の対応としてこれは良くない、と思いました」(同前)
「この件は性犯罪とは言えないと思っています」
対応に疑問を感じたAさんは翌日、Facebookの専用ページやtwitterを通じて抗議した。
《いかに楽しくても安心感のない、どこに進むかわからないコミュニティになると、コミュニティ所属者は相当な不安を抱く》
《対抗言論という考え方がある。声に対しては声で対抗する。誤解があるなら言葉で説明する。だが、誰かの声を「なきもの」として黙殺してしまえば、その者は声をあげる手段をなくす》
「抗議からほどなくして、はあちゅうさんから、ご自身が告発投稿を削除したことを認めた上で、《私はこの件は性犯罪とは言えないと思っています》とFacebook上で返信がありました。告発された側の男性からは削除後に話を聞いたようですが、肝心の告発者であるBさんへの聞き取りはしていないようでした。つまり、告発を削除した時点では、どちらの人物からも話を聞かず、投稿を読んだだけだったんです」
Aさんはさらに《声をあげた者の存在を受け止めるべき》《「隠蔽している」との印象を抱かせかねない》などと説得を試みたものの、はあちゅう氏からは《サロンとして対応することは今後もない》と返答があるのみだった。
「はあちゅうさんの投稿には《一方的な訴えを鵜吞みにして人を罰することやリンチのような状態になるのは、望ましくない》など首肯する部分ももちろんあります。ただ、当事者の話を聞かずに投稿を削除することは“一方的な訴えを鵜呑みにする”ことなのではないか。#MeToo運動を牽引するはあちゅうさんを支持してきた自分としては、彼女の対応は受け入れ難いものでした」
失望したAさんは、ほどなくしてサロンを退会。しかしその後も、この事件はAさんの心に深く刻み込まれていた。