再生エネルギー開発のために、都市機能立ち上げが必要に
そして、メガソーラーであれ洋上風力発電であれ、地熱発電や潮力発電その他さまざまな再生エネルギーの可能性を考え、一個一個積み上げていくとしても、今度はそういう再生エネルギーを担う地方をどうやって再興するかという問題に突き当たります。
前述の秋田県では、秋田市から離れた地域に洋上風力発電を担う事業所を作るにしても、相応にスキルや知識を持った従業員が800人近く、30年以上にわたってこれらの洋上風力発電プラントの運営・維持・管理をしていかなければなりません。では、「それだけの技能者を秋田県で集められるか?」と言われるとNOなので、各地からかき集めてきて働いてもらう必要があるのですが、当然結婚もするだろうし、お子さんも生まれるだろうし、病気もするだろうし、お買い物や文化的生活もするぞとなると、道路から学校から病院からすべての都市機能を新たに再生エネルギー開発のために立ち上げる必要が出てきます。
まだ日本が元気で炭鉱ひとつ立ち上げるのにみんなこぞってやってきた時代と異なり、少子化で、また疲弊した地方から都市へ人口が流れてくる現代において、再生エネルギーを担う技術者が家族を抱え、子どもの教育をし、将来就職活動するよといって地元にいい働き口があるかどうかまで考えてあげなければ、地方で再生エネルギーのプラントひとつも興せないことになります。
突然「良い風が吹いているから」と言い出した小泉進次郎さん
ある日突然、ここは良い風が吹いているから再生エネルギー特区としてスーパーシティを作り、日本のエネルギー政策を転換するんだよと小泉進次郎さんが言い出し、レジ袋を有料化しながら「このエネルギー基本計画案では、2030年度の再生可能エネルギーの導入目標を『36~38%』とする」とか言われて、ほんとお前どうするんだよと思うわけですよ。
再生エネルギーの割合を増やし、温暖化ガスを削減して、世界的な気候変動がより破壊的なことにならないようにする、という方向性には誰も反対しません。ただし、それがどういう手順で、いかなる実現可能な目標設定であるべきかについては、本当はきちんと科学的根拠やプロジェクト上の達成スケジュールを組み合わせて考えていかなければなりません。そこにイデオロギーが入ってきたとか、あるいは海外の環境活動家にいい格好をしたいとか、ファミリービジネスが視野に入るとか、そういう話があると国民生活にダイレクトに影響する電力価格が上がり、産業のコストに跳ね返り、なかなか大変なことになるでしょう。