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 また、壁を石材やレンガで作る南欧や北欧スタイルの家屋は美しく、ガーデニングもやりがいがあるだろうが、さぞかしお金がかかることだろう。あらかじめ作っておいた部材を、現場で組み立てるプレハブ工法なんていうものもあるようだ。

 簡単なイラストが描けたら、建築会社の設計士とのやりとりがスムーズになる。

 平屋か二階建てか。玄関はどっち向きで、メインの居間はどの方向にあるか。部屋はどれだけ必要か。家族構成や地所の環境などによって、いろいろと考えねばならない。

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 また家や建築に関する知識を自分で勉強し、業者の言葉を鵜呑みにしないようにすることも大事だ。

 いい土地との出会いが理想的だが、家を建ててくれる建築会社や建築士らとも素晴らしい出会いでありたいと思う。

 ちなみに我が家と契約したSというログメーカーは数年前に会社をたたんだが、社長とは今でも知り合いだし、家を建ててくれたログビルダーはいっしょに焚火をする仲で、竣工から20年も経過しているのに、去年も雨漏りの修繕などに尽力してくれた。

 人との出会いは大切である。

スローライフは幻

 本章の最後にひとつ、大きなテーマを持ち出したい。

 ──田舎暮らしにスローライフなんて存在しない!

 ここで20年生きてきて、実感し、この先もずっと変わらぬ生活のテーマである。

 田舎でのんびり暮らす。

 定年退職のあとは地方でスローライフ。

 そんなまやかしのスローガンに踊らされてはいけない。

 田舎暮らしはとにかく多忙だ。朝から晩まで汗水流して働きづめである。

 夏草の刈り払いもそうだが、冬に雪が降れば雪かき。

 庭の手入れ、薪作り、家庭菜園や農地での水まき、草むしり、肥料のすき込み、収穫。鉢植えに水をやったり、ペットの世話をしたり。

 他にもいろいろトラブルが舞い込んできたり、まあ、そのさまざまなトラブルについてはあとで述べるが、とにかく気休めになる時間がない。余裕がない。

 あっという間に日が暮れる。一日って、こんなに短かったっけ?

 ここに移住してきて、こんなはずじゃなかったと思う、大きな理由のひとつだ。

 子供が学校に通えば、PTAの会合があり、役員になったり(これは都会も同じだが)、通学路の掃除や校庭の草刈りにかり出されたり。運動会の準備や後片付けをしたり。安全パトロールで通学路を歩いたりもする。

 少なくとも、自分の周辺でスローライフを謳歌している家はほとんどない。

 みなさん、本当にそれぞれのライフスタイルの中で忙しそうだ。

 例外的に、お金に余裕があって、生活に必要なことをなんでもかんでも業者や職人などにやらせて、自分たちは昼間からくつろいで酒を飲んだり、ろくに外にも出ずにテレビを観てたりする人たちがいたが、そういう生活の在り方はけっしてスローライフとはいわないと思う。

【続きを読む】コロナ禍で増加した地方移住…地元住民の頭を悩ませている“モンスター新住民”の実態に迫る

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樋口 明雄

光文社

2021年9月15日 発売