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 また外務事務官逮捕 ラストボロフ氏事件で

 ラストボロフ氏に情報を提供していた日本の官庁グループを追及中の警視庁公安三課では19日夕刻、外務省経済局経済第二課、高毛礼茂・事務官(51)を国家公務員法第百条(秘密を守る義務)違反容疑で逮捕、身柄を警視庁に留置するとともに20日朝、都内数カ所を捜索した。

 調べによると、同事務官はソ連経済通で海運、船舶関係を担当していた関係で、米軍関係の船舶についての「秘密」を、既に逮捕された庄司、日暮両事務官らとともにラ氏に提供していた疑いによるもの。

 同事務官は戦前、某漁業会社員としてソ連に出張勤務し、戦後帰国し同課に勤務したものだが、在ソ中にソ連情報当局に働きかけられ、帰国後、元ソ連代表部と関係を持つようになったという。

「語り部」の自殺

 その後も各紙は大きく書き立てた。「ソ連スパイ網をあばく ラ氏と関係の日本人 数十名に上る」(8月15日付毎日朝刊)、「“スパイ事件は世界的流行” “個人戦時代”終る」(同日付読売朝刊)、「民間人20名が関係 近く法務省から発表」(8月20日付毎日夕刊)……。こうして“スパイ網”の摘発は本格化したように見えた。しかし――。

 ラストヴォロフ事件の元外務事務官 日暮氏飛降り自殺 東京地検四階で取調べ中

 ラストボロフ事件の容疑者として国家公務員法第百条違反容疑で逮捕、東京地検で取り調べ中だった元外務省欧米局第五課勤務事務官、日暮信則氏(44)は28日午後0時40分ごろ、取り調べ係官のすきを見て同地検4階から飛び降り自殺を図り、直ちに東京病院に収容されたが、午後1時4分、頭蓋底骨骨折で死亡した。東京地検で取り調べ中に飛び降り自殺したのは戦後初めての出来事である。

逮捕された事務官が自殺した(読売)

 8月28日付読売夕刊は1面トップでこう報じた(朝日、毎日は社会面トップ)。記事によれば、東京地検の長谷副部長検事がこの日の取り調べを終え、調書に署名押印させた。日暮元事務官は「いろいろお世話になり、ありがとうございました」とあいさつ。ことが起こったのはその直後だったという。素直に事件の全容を自供していたとされる。

 各紙は「日暮氏はなぜ自殺した 二重スパイの疑い」(8月29日付朝日朝刊)、「日暮氏はなぜ死んだ? 事件の波及を恐る」(同毎日)と書いたが、「証拠固めに大穴」(同読売)となった。「戦後政治裁判史録2」も「捜査当局にとって、日暮は事件の唯一の『語り部』といってもよかった。地検にとって日暮の自殺は手痛い失敗となり、その後の公判維持のうえからも大きな禍根を残す結果となる」としている。

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日本で事件捜査が進んでいた間、ラストボロフは…

 一方、庄司元事務官は拘置理由開示の法廷で「逮捕に政治的なにおいがある」と語るなど、容疑を否認して徹底抗戦の構えを見せた。