カルマン・ギアやポルシェ914は、いずれもドイツ車であり、雰囲気としては従来の車種と通ずるところもある。
アメ車風のロックスターよりも、全体的なラインナップとしてはむしろ統一感が生まれそうだが、渡部氏の「今の感性」には訴えかけるところがなかった。
「デザインは非常によくできていたんですが、若い時は大人びたものに憧れていたのに、大人になってみると刺激が足りない。その後青木とアメリカでの暮らしや車の話を続けているなかで、それを受けて出てきたのが今のロックスターでした」(同前)
「もう一発でコレだ、という感じで。BUBU(編集部注:光岡自動車が行うアメ車販売事業)をやってるのもありますし、光岡自動車全体のお祭りとして、みんなで盛り上がれる。コレしかないと思いました」(同前)
アメ車風のデザインを採用することで、ロックスターは開発事業だけでなく、光岡自動車の多面的な事業を総括する記念碑的なモデルとして位置づけられた。渡部氏と青木氏の連携もそうであるが、「お祭り」を共にするという意識からも、光岡自動車という組織に共有される連帯感が窺える。
初の量産SUV「バディ」は“納車2年待ち”の大ヒット
ロックスターに続き、光岡のブランドイメージを確立させたのが、アメリカンSUVのテイストに仕上げたバディである。量産モデルとして企画されたにもかかわらず、現在の納期は2年と、想定を上回るペースで受注が入っている。
SUVといえば現在、空前のブームが巻き起こり、国内外を問わず各メーカーがこぞってラインナップを拡大しているジャンルである。しかし渡部氏の話では、バディの企画は「市場で売れているからSUVを」という発想から始まったのではないという。そこにはニッチ市場を見据え続けた光岡ならではの、ある種の「ヒネクレ」が見て取れる。
「SUVの市場規模がどんどん大きくなるにつれて、どこのメーカーのモデルも一目でフラッグシップとわかるような感じになってくるんですよね。ブランドのトップというか。街中で見ていると、自分はなんというか、疲れちゃうんですよ。高級路線だし、いかにもブランドのメインといった顔つきになってくる」(同前)
確かに現在のSUV車種は、所有欲に訴求するような、ステータス性を重視したデザインが多く見受けられる。
かつてのセダンに代わって、ブランドイメージを担う車種としてSUVを打ち出すメーカーも少なくないなか、光岡はそうした傾向に逆らう企画で勝負をかけた。