1ページ目から読む
2/5ページ目

東京拘置所の一日

 ここに収容されている確定死刑囚の一日は、裁判で判決の確定していない「未決拘禁者」の生活と基本的に同じだ。

 午前7時に起床し、7時25分に朝食。11時50分の昼食と、午後4時20分の夕食をはさみ、5時の仮就寝(照明を暗くはしないが寝ることは可能)、9時の就寝と決められている。この間、運動や入浴なども行われるが、それ以外は基本的に余暇時間だ。民間業者と契約して、袋張りなどの簡単な作業に従事して報酬を得る「自己契約作業」をする場合もある。

 拘置所内には確定死刑囚を専門に収容する「死刑囚棟」「死刑囚ブロック」といったようなエリアが存在すると思われがちだが、実際には一般の収容者と交ざるかたちで、分散して独居房に収容されている。

ADVERTISEMENT

 扇形の枠のようになっている4つの収容棟(A~D棟)すべてに確定死刑囚が収容されているが、数の多いのがC棟とD棟の11階だ。それぞれのフロアには66の房(部屋)があるが、確定死刑囚が収容されるのはそのうちの30房ほど。確定死刑囚は一房ずつ間を空けて収容される。

 確定死刑囚の入る房はいずれも奇数番号で、そこには監視カメラが取りつけられている。間の房には東京地検特捜部が扱った事件の被告人といった、社会的に著名な人物を入れることが多いが、周りの房に死刑囚がいると伝えられることはない。

写真はイメージです ©iStock.com

 確定死刑囚が一日の大部分を過ごす房は、建物の外壁から約1・5メートル内側に設置されており、通路を挟んだ「部屋の中の部屋」といった構造になっている。「内部を見たり、見られたりされたくないという近隣住民への配慮」(東京拘置所幹部)というが、被収容者にとってはかなりの心理的圧迫となることは間違いない。そのため、被収容者に過剰なストレスを強いているとして、改善を求める専門家の意見も根強い。

 室内の壁は明るい白で、薄緑色の畳が3枚敷かれ、奥には洋式トイレと洗面所がある。洗面台の蛇口がボタン式なのは、突起物をなくして自殺を防止するためだ。洗面所の鏡は割れないフィルム式で、壁のフックも一定の重さがかかれば外れる仕組みになっている。