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「“させていただく”を“適切”に使っても現役世代はイラッとする」 新入社員が一生使える“敬語”のルール

2022/04/07
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「させていただく」を平和に使うルール

 辞書編纂者の飯間浩明さんが、『文藝春秋』で「日本語探偵」というおもしろい連載を書いています。そこで挙げられていた「させていただく」を平和に使うルールがわかりやすかったので紹介します(『文藝春秋』2019年1月号)。

(1)謙譲形のある動詞は、それを使うこと

 

(2)へりくだる必要のないところで使わないこと

 

(3)なるべく繰り返しを避けること

 要するに、「させていただく」は、それしか使えない場合以外は使わない方がよいということです。自分が丁寧だと思って使っても、相手は失礼だと感じるので、別の表現に変える必要があります。それをちょっと見ておきましょう。

 動詞に「お〜する」や「いたします」をつけると、謙譲形が作れます。ただ、「お〜する」は謙譲形を作れない動詞が多く、「いたします」はサ変動詞にしか使えない使用制約があります。例えば、「帰る」「使う」は、「お帰りする」「お使いする」とも「お帰りいたします」「お使いいたします」とも言えません。こういう場合、「させていただく」を使うしかありません。このように、「させていただく」は最後の手段にとっておいてください。

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便利な定型句には罠がある

「させていただく」はどんな動詞にも付けられるので、とても便利です。便利すぎて使いすぎるのが難点。どうしても適切な言い方が見つからない時は、『言い換え辞典』を使うのも一つの手です。

©️iStock.com

 ここまで、敬語のルールをお話ししてきましたが、コミュニケーションには、「こうしておけばOK」といった万全のルールはありません。ただ定型句ばかり使っていると、コミュニケーションが平板になるので、相手から「つまらない」「機械的に対応されている」と感じ取られてしまうこともあります。

 失敗しないように安全な距離をとり続けるよりも、いろいろな敬語を駆使して相手から距離をとったり近づいたりしてみる方が、得てして好感を持たれるものです。

 一度くらい失礼な言い方をしてしまっても、大丈夫。何度か距離感を修正しているうちに、仕事も初対面の人との交流もうまくいくようになるでしょう。

 言葉は生もの、相手や場面に合わせて、適切に扱う必要があります。臨機応変に、目の前の相手や状況に合わせて敬語をうまく使いこなして、コミュニケーション上手になりましょう。それがみなさんの目指すべきゴールです。

「“させていただく”を“適切”に使っても現役世代はイラッとする」 新入社員が一生使える“敬語”のルール

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