「まず申し上げたいのは、ロシアの侵攻が始まって以来、自分の見解を公けにするのは、これが初めてだということです。自国フランスでは、取材をすべて断わりました」

 世界的な歴史人口学者であるトッド氏は、本誌のインタビューでこう語り始めた。 

 ロシアによるウクライナ侵攻は「第三次世界大戦」に発展しかねない情勢だ。今後、各国はどう動くのだろうか。トッド氏は世界的な危機に際して、「行動が予測可能な国」と「予測不能な国」があるという。

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「『プーチンは狂っている』と言われますが、ロシアは、一定の戦略のもとに動いています。その意味で予測可能です。ロシアの行動は『合理的』で『暴力的』と称することができます。それに対して予測不能なのが、ウクライナです。米英に背中を押されて、クリミアとドンバス地方のロシアからの奪還を目指したわけですが、軍事力や人口規模から見て、非合理的で無謀な試みだと言わざるを得ません。

エマニュエル・トッド氏

 しかしそれ以上に、予測不能で大きなリスクとなり得るのが米国の行動です。プーチンを中心とするロシアと対照的に、中枢がないからです。米国の“脳内”は、雑多なものが放り込まれた“ポトフ”のようです。『ロシアの体制転換』など、無責任で予測不能な失言を繰り返すバイデン大統領は何を考えているのかよく分かりません」

 米国の行動の“危うさ”は、日本にとって最大のリスクになるだろうとトッド氏は指摘する。

「当面、日本の安全保障に日米同盟は不可欠だとしても、米国に頼りきってよいのか。米国の行動はどこまで信頼できるのか。こうした疑いを拭えない以上、日本は核を持つべきだと私は考えます」