悲しくなるほど薄いお茶
ところ変わって、もう一軒のРЫНРАДО(リンラド)は、比較的新しく2015年にモスクワ大学のそばにオープンした2号店。店内は地下から2階までが吹き抜けのような形になっていて、祖国に似合わず開放的な雰囲気である。内装が新しくきれいなのはいいが、北朝鮮らしさがあまり感じられないのは残念。基本的なメニューや価格はコリョとさほど変わらないが、、全体的な味の評価はコリョに軍配が上がる。無料でお茶がつき、店員が何度も注ぎにきてくれる。悲しくなるほど薄い本国仕様のとうもろこし茶だが、店員に話しかけるチャンスに恵まれる。
地下階奥には防音の二重扉を備えたカラオケルームがある。一度店を訪れたときには、平日の昼時にもかかわらず大々的な宴会が催されていて、北朝鮮の歌謡曲を熱唱する歌声がドア奥から漏れ聞こえてきた。接待なのか打ち上げなのか、本国の状況はいざ知らず景気は良さそうだ。
「敵国のレストランに頻繁に出入りしているようだが」
そんなリンラドだが、ある韓国人留学生が通っていたところ、韓国大使館から「敵国のレストランに頻繁に出入りしているようだが、何か理由があってのことなのか」との電話がかかってきたという。さすがは戦争中の国同士といったところだが、本人はカードを使ったこともなく、店に電話を入れたこともなく、大使館はどうやって把握したのだろうか。
幸い私のところにはまだ電話はかかってきていないが、日本人としてはやはり自重すべきかもしれない。一方で、先日、北京最大の北朝鮮レストランが中国政府による制裁措置で閉店に追い込まれた。金正恩体制の先行きも怪しくなる一方であるし、店がなくなる前に行っておくべきか、自粛すべきか、複雑な年の暮れである。
写真=栗田智