2013年にWBC(ワールドベースボールクラシック)の日本代表として、台湾のチームと戦った元阪神の鳥谷敬氏。1点を追う9回表というピンチの中、起死回生につながる「二盗」に挑んだ彼の心情とは?
プロ野球人生18年間の軌跡や思いを綴った新刊『明日、野球やめます 選択を正解に導くロジック』より一部抜粋してお届けする。(全3回の1回目/#2、#3を読む)
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鳥谷が追いかけた「メジャーへの夢」
プロに入ってから、ずっとメジャーリーグに行くことを意識してプレーしてきた。そのなかで、2013年にWBC(ワールドベースボールクラシック)の日本代表として出場させてもらったことは、かけがえのない経験になった。
WBCの過去2大会でチームを引っ張ったイチローさん、ダルビッシュ有投手らのメジャー組は不在。初めて国内組だけでの世界一への挑戦となる。それでも、田中将大投手(当時・楽天)、前田健太投手(同・広島)らの投手陣に加え、阿部慎之助捕手(同・巨人)、中田翔外野手(同・日本ハム)、内川聖一外野手(同・ソフトバンク)ら、そうそうたるメンバーが集結し、3連覇に大きな期待がかけられていた。面白いことに、内野手は7人のうち4人が遊撃手。一塁手・井端弘和さん、二塁手・松井稼頭央さん、三塁手・鳥谷敬、遊撃手・坂本勇人選手という、ある意味すごいメンバーで内野を守っていたこともあった。
ボールが重くて飛ばない、投げても滑りやすいという懸念はあったのだが、アメリカの球場でメジャーのボールを使うと、意外と違和感がなかった。もちろん、アメリカでも乾燥している地域ではとても滑りやすいのだが、場所によっては日本よりも打球がよく飛んだぐらいだ。
本選の第1ラウンドでは、日本代表はキューバに敗れ、ブラジルにも苦戦しながらも、A組2位で第2ラウンドに駒を進めた。このチームでの自分の役割は、本職の遊撃手というよりは三塁手や二塁手。メジャーに行くことを考えると、遊撃手ではなくとも、自分がどこまでできるのかを測る意味で、ちょうどいい機会だととらえていた。
今でも忘れられない試合がある。第2ラウンド1回戦のチャイニーズ・タイペイ戦。「鳥谷の二盗」として覚えてくれている人もいるかもしれない。