1ページ目から読む
6/6ページ目

 野球部員は、指導中に指導者が机を蹴っていたのを目撃しているが、尋問では指導者は「覚えていない」と話した。ただ、「学校生活が変わっていないなら、部活をする資格がない」「練習せずに帰れ」などと言ったことは認めた。「帰れ」と言う指導は、他の部員に対しても行っていたが、ヨウヘイさん以外は、反省が見えた場合にはグラウンドに戻した。しかし、ヨウヘイさんも同じく反省の言葉を述べたものの、グラウンドに戻すことはなかった。

「ほうき事件のことが頭にあったので、『学校生活が変わっていないなら部活をする資格はない』などと言いました。『家に帰れ』と言ったら時間をおいて、『戻してください』と言いにきた。それまで私の横にいて、一緒に練習を見ていました。反省している様子でした」(非常勤講師、証人尋問)

ヨウヘイさんが壊したほうき

「指導死」は全国で発生している

 “カボチャ事件”のことは、職員室で教頭かも指導されたことで終わっているはずだった。そのことを反対尋問で聞かれると、非常勤講師は次のように答えた。

ADVERTISEMENT

「スポーツをする上で集団に対する影響を考えていました。(教頭からの指導に続いて)同じことでくり返し指導を受けることになりますが、心理的に過剰な負担になることはありません。『帰れ』という指導は、辛いことだから効果がある。起きたことに対して反省してから参加してほしい気持ちでした」

 ヨウヘイさんは、それまで指導者のそばで練習を見ていたときもあったが、部の倉庫として使っているコンテナ内に一人で入った。被告側の主張によると、午後5時15分ころ、野球部の顧問がグラウンドにきたため、指導者の非常勤講師は指導した内容を説明。ヨウヘイさんの話を聞くように依頼したという。顧問が部の倉庫へ行くと、ヨウヘイさんは補修用のネットのロープをいじっていた。

 1年前から続く指導対象だったことに加え、“ほうき事件”による指導と反省文、背番号が「18」になったこと、そして“カボチャ事件”……。ヨウヘイさんにとっては理不尽と思える出来事が続いた。生活指導と部活動の指導を連動させられていた。

 部活動で指導したのは非常勤講師。担任ではない数学の教師との事実上の連動(同教師は非常勤講師との連携を否定し、連絡しただけと主張)はあったものの、管理職には伝えていない。つまりは、組織的な指導ではないということになる。

 教師による不適切な指導を原因とする自死、いわゆる「指導死」は全国で発生している。果たして本件も「指導死」と認められるのか。9月30日には両親の尋問があり、裁判はようやく終結に向かう。

写真=渋井哲也