「子役は大人になると売れない」ジンクスが消えたワケ
2009年にトヨタ自動車のCMで「こども店長」を演じて一世を風靡した加藤清史郎さんは、昨年の日曜劇場ドラマ『ドラゴン桜』(TBS系)や、今年の月9ドラマ『競争の番人』(フジテレビ系)といった話題作にレギュラー出演し、大人の俳優に進化中。
2011年のドラマ『マルモのおきて』(フジテレビ系)で一躍人気子役となった芦田愛菜さんと鈴木福さんは、今も多くのメディアで目にします。特に芦田さんは、近年は学業を優先されているようでドラマや映画の出演数は限られていましたが、バラエティ番組のMCや数多くのテレビCM出演で観ない日はないほどの活躍ぶりです。
安達さん、加藤さん、芦田さん、鈴木さんという元子役が今なお第一線で活躍しており、福原さんから神木さんへ朝ドラ主演のバトンリレー。“子役は大人になると売れない”というジンクスはどうしてなくなったのでしょうか。
それは、“子役は大人になると売れない”というジンクスがあまりにも有名で、核心を突いていたからかもしれません。
日本国内に限らず、例えば映画『ホーム・アローン』(1990年)のマコーレー・カルキンさんや、映画『シックス・センス』(1999年)のハーレイ・ジョエル・オスメントさんといった世界的子役スターも例外ではなかったため、その呪縛のイメージがあまりにも強固になっていたのでしょう。
けれど“子役は大人になると売れない”というイメージが浸透しすぎたおかげで、人気子役たちはその後の活動が定期的にフィーチャーされる機会に恵まれていたのではないでしょうか。
忌憚なく言わせていただくなら、元子役が、仕事がなくて落ちぶれていたとしても、順調にキャリアを積んでいたとしても、“あの人は今”的なエンタメトピックとして一定の需要があり、よくも悪くもメディアの格好のネタになります。そして、どちらに転んでもジンクスを打ち破ろうと戦う姿が共感を呼び、応援してくれるファンが増えるという好循環が生まれていたのかもしれません。
“負”のジンクスが非常に有名になったため、彼らの近況は常に一定の注目度を維持し、飽きられずにきたのでしょう。そんななか、もともと役者としての才能があり、キャリアも早くからしっかり積んでいた彼・彼女たちが、確固たる実力を身に付けていたから、大人になってからも需要が続いているように思います。
朝ドラスタッフの粋な計らい?
最後に話題を福原さんに戻しますと、朝ドラスタッフの粋な計らいに気付いた方も少なくないでしょう。
NHKで4年間“まいんちゃん”として人気子役だった彼女が、約10年ぶりにNHKに主演で帰ってきた作品名が『舞いあがれ!』であり、演じる主人公の名前が岩倉舞。まるで彼女の出世と凱旋を、「まいんちゃん、お帰り!」と祝しているような作品名と役名なのです。
『舞いあがれ!』では、飛行機への憧れから、大学では人力飛行機サークルで活動し、その後本物のパイロットになるという夢に向かって邁進していくヒロインを、高く通るきれいな声で瑞々しく演じています。
やはり、“まいんちゃん”から朝ドラヒロインを掴んで羽ばたいた福原さんと、そのバトンを受け取る神木さんの元子役リレーは、“子役は大人になると売れない”というジンクスが消え去ったということを象徴しているように感じます。