いまの台湾情勢を読み解くうえで重要な部分は
中国人民解放軍による武力侵攻で台湾統一が「ある」か「ない」かは予想にすぎず、ないと信じたいにしても、万が一「ある」場合に台湾は郷土防衛に立ち上がらなければなりません。台湾人の大多数は「人民解放軍による台湾侵攻のような有事は起きない」と楽観的に思っている面はあるでしょう。しかし、先に台湾経済を支える業界や財界人がこぞって台湾を脱出して、いざというときに備えようとしているのは何を意味しているのか、台湾人も日本人も理解する必要があるように感じます。
また、負けて占領されたときに備えて重要な知的財産の爆破も考えたうえで、工場の疎開や資本の逃避はしておかないと台湾を台湾たらしめていたものがなくなってしまいます。
少し上の世代までは「中国人であり、台湾人である」というアイデンティティが台湾人の中核であったものが、いまや「中国人ではなく、民主主義的な台湾人である」という認識が広がっているのもまた、いまの台湾情勢を読み解くうえで重要な部分なのではないかと思います。
奇しくも、今回退席させられた胡錦涛さんが国家主席の頃は、台中間は融和路線であり、三通政策という「通商」「通航」「通郵」を是とする穏やかな経済協力を結んでいた、割と穏やかな時期でした。
気がつけば、習近平さんの就任した2012年以降、少数民族への弾圧や香港の民主化運動の鎮圧、南シナ海の実効支配、一帯一路や上海協力機構による「債務の罠」など、いろんなものが着々と進んできた時期と重なります。明らかに台湾がロックオンされているのであればなおのこと、何事か「ある」可能性を考えながら身を処すしか方法はないのではないでしょうか。
米軍基地を多数抱える日本はどうするべきなのか
それは、台湾が攻め込まれたらアメリカ軍が助けに来てくれるかどうか分からない台湾と同様に、日米安保が結ばれながらも実は明確に、具体的にはいつアメリカ軍がやってきてくれるか分からない日本とも関係がダブります。尖閣諸島の重要性は日本だけでなく、台湾とも、また、この海域のシーレーンに依存する韓国とも同じ利害関係を持っています。
さらには、中国だけでなくロシア、北朝鮮といったすっげえ危険な国々と海で繋がる隣国を持つ日本だけが安全とは思えず、米軍基地を多数抱える沖縄を大事に抱きながら日本はどうするべきなのでしょうか。
よりによって、このタイミングで岸田文雄さんが総理大臣なわけだが。