当然、中国との貿易に依存する日本経済も面倒なことになるわけですが、相対的にアジアのほかの地域の経済のほうが先に大変なことになるのではないかとも想定されます。中国経済の低迷は中国国内だけの問題というよりも、中国との貿易に依存して人民元安に直面したアジア諸国が引き起こす通貨危機のほうが先に面倒を起こす危険があるのです。
その中でも、特に、経済的にも安全保障的にも逆風にさらされるのは台湾でありまして、目下、地政学的な意味合いも兼ねて、日本に対する事業移転や投資が進んでいるのはかねて報じられているところです。円が安いからね。仕方ないね。
諸外国の外交や圧力でも止まらない、中国の強固な意志
メディアでは「買い叩かれる日本」と揶揄されるところではありますが、実際に投資の現場で起きているのはかなり悲痛な「台湾などアジア諸国から日本への事業、資本の逃避」です。台湾系ファンドや事業者が首都圏や九州に分厚い投資を行おうとしているのは、単に「日本円が安くて投資をする側が有利だから」というだけではなく、万が一、本当に習近平さんが台湾統一を企図したら台湾が滅亡しかねないから早い段階で逃げざるを得ないというかなり切羽詰まった状況になっているのもまた事実です。
もちろん、中国通や台湾民情に詳しい人たちのなかにも「台湾有事を煽り過ぎだ」と反論する向きも強くあります。まあ、もちろん私も台湾とは取引が多いこともあって、このまま中国本土と台湾の間で何事もなく平穏にやっていってくれればいいなあと願うのは間違いありません。武力侵攻なんてやったところで、リソース使うし傷つくし、ろくなことはないのはよく分かっていますから。
ただ、実際に台湾の人たちは香港やチベット、新疆ウイグルといった、中国外縁部の人たちがどんな目に遭ってきたのかもまた、よく知っています。中国が本気で「やる」となったら、それこそプーチンさんのロシアがウクライナ侵略に強固な意志を示して実行している姿を見てもわかるように、諸外国の外交や圧力でも止まらないことを理解しているのです。ロシアも中国も国連の常任理事国ですから、決定的なところで国連は頼りにならないのは間違いありません。
ましてや、コロナ対策で中国人が多数住み、有数な経済力を持つ上海市ですらも、激しいロックダウンを実施する強権を振るうことができるのは、やはり専制主義的な政治体制を中国共産党が一党独裁において敷いているからに他なりません。上海など都市部に住む多くの裕福な中国人も、繁栄を謳歌しながらも新疆ウイグルやチベットで起きた弾圧をスルーしていましたが、コロナ禍で自分たちもロックダウンの対象にさせられ強権的に不自由を強いられることで、「専制主義の恐ろしい矛先が自分たちに向いたらどうなるか」を肌身で感じたのではないかとも思います。