自公政権は、いつの間にか中道左派的な政策を実現する存在に
他方で、安倍政権を支えた岩盤支持層的な保守層からは、かなり自民党は離脱されてしまっており、これらはテーマ性の塊みたいな日本維新の会に流れていってしまっています。今年4月の統一地方選挙でも東京では自民党は大敗と言っていい惨状になっており、得票予測でも右派は維新に流れ、都市部は立憲民主党に奪われる状況になると、せっかく岸田さんがやる気になっても完敗となりどっかと政権交代しなければならなくなるかもしれません。
保険として、ちょっと前まで何故か国民民主党との与党連立に含みを持たせる話が流通していましたが、そもそもが連合(労働組合)を支持母体とする国民民主党がたまたま政策協議で話の分かる玉木雄一郎さんが代表だからと言っていきなりご一緒するのは公明党さんも容認しなかろうと思います。
そういう話が出るのも、岸田文雄さん率いる自公政権は、いつの間にか中道左派的な政策を実現する存在となり、経済対策も経済的弱者に対してガソリン代や電気代、批判も多かった働き方改革の断行、果ては子ども養育費の扶助といった、大きい政府、高い負担で高い福祉・生活保障へと舵を切っているからに他なりません。総体的に支持率が立憲民主党や日本共産党が埋没するのも、実際に左派的な政策はおおむね自民党に先取りされてしまってやることが無くなっているからLGBT関連とか不同意性交罪のようなネタしか残されなくなっており、都市部の左翼票頼みになっていく局面になってきました。
逆に、日本維新の会が脅威になっているのは文字通り日本土着の新自由主義とも言うべき「働かざる者、喰うべからず」の精神で小さな政府、低負担、低福祉の政治軸を明確に打ち出し、社会保障とか支える役所とか全部予算切っちまえよという割り切った政策が、負担増が続く社会保険料で悩む勤労世帯のハートをつかんでいるとも言えるわけですよ。本来なら、自民党こそがそういうことを言って旧社会党から怒られるという旧55年体制を見てきた人たちからすると寂寥感すらある事態だとも言えるんですけどね。
岸田さんがとるべき手段は?
岸田さんが、このままの政策方針で日本全体をどうにかしよう、日本人全員を分け隔てなく良い生活を送れるようにするのだという路線であるならば、今回の解散総選挙以降の岸田さん最大の敵はこの「日本土着の保守思想である維新の会そのもの」になってきます。各種世論調査でも、実質的に野党第一党はもはや維新である一方、都市型選挙区では立憲はまだまだ強く、その両方から挟まれる自公政権が失う議席をどれだけ最小限にとどめられるのかが、解散に打って出る岸田文雄さんの担うべき責務と言えましょう。
働かない誰かを斬り捨てて活躍できる人たちにもっと配分しようという維新は活力を前面に出し、それに対抗するには岸田さんが国民全体で安心・安全な社会を作るための改革を断行しますよというしか方法はないんですよね。
その辺を上手く言葉にできて選挙に強かったのが安倍晋三さんの本質であったとするならば、その後継となる岸田さんがアベノミクスを反省し、統括する別の何かを打ち出さないとせっかく選挙になっても勝てないんじゃないの、岸田さんの気持ちは分かるけど選挙はやめようよってなるのではないかと思います。