このところ顕著な円安が続いている。2022年秋には一時、1ドル=150円台まで円安が進み、24年振りの円買い介入が行なわれたことは記憶に新しい。その後、一時円高となる局面もあったが、本稿を執筆している23年9月中旬時点の円ドル相場は140円台後半であり、為替介入が行なわれた1年前と同水準だ。
この円安の影響で、日本の物価は海外と比べて極端に安くなっている。読者も、インバウンド観光客が「日本は何でも安くてサイコーだ」と話している映像を見たり、「ニューヨークではラーメン1杯で何千円もする」と嘆く日本人の話を聞いたことがあるのではないか。いわゆる「安いニッポン」である。
10年少し前には、日本の経済人の頭痛のタネは円高だったが、今は物価上昇に賃上げが追いついていないこともあり、「悪い円安」との見方が拡がっている。
円安進行の2つの理由
この円安進行には2つの理由が考えられる。1つは内外金利差の拡大だ。実は22年初めまで、日本の政策金利がマイナス0.1%に対し米国の政策金利は0~0.25%と殆ど差が無かった。ところが、米国では消費者物価でみたインフレ率が一時8~9%に達したこともあり、急激な利上げが繰り返されて、現在の政策金利は5.25~5.5%となっている。これは米国だけでなく、ヨーロッパやアジアの多くの国でも利上げが行なわれている。
これに対し日本では、インフレ率は3%台、ガソリンや電気・ガス料金への政府の補助金の影響を除けば4%台に達しているにもかかわらず、日銀は「安定的・持続的な2%インフレは実現していない」として、マイナス金利を改めていない。おカネは金利の低い国から金利の高い国に流れていくものだから、これだけ金利差が拡大すれば、円が売られてドルが買われ、円安となるのは当然と言える。