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《初春歌舞伎は初の父子3人共演》市川團十郎が語った子育ての覚悟「ママみたいな存在を目指している」

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初春歌舞伎公演に父子3人で共演中の市川團十郎白猿さん。文藝春秋の取材に「“ママのようなパパ”になる」という子育ての覚悟を語った。その言葉の真意とは……。

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“ママのようなパパ”になる

 私にとって何よりも大切なのが、勸玄(かんげん、八代目市川新之助、10歳)と麗禾(れいか、四代目市川ぼたん、12歳)です。麻央が亡くなった時に、“ママのようなパパ”になろうと決意しました。日本のパパって、どこかダサいじゃないですか。「パパ汚い。お風呂、先に入らないで」とか言われてしまう。そうはならないように努力をする上で、目指しているのがママみたいな存在なのです。

市川團十郎白猿さん ©文藝春秋

 子供の頃、何か悲しいことがあったときに、母が「大丈夫よ。ご飯食べましょう」と言って出してくれた、ご飯やみそ汁の温もり。これは母親がいなければ味わえません。勸玄と麗禾はそれを知りませんから、私が母親のような包容力を身につけたいと思っているのです。

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 だから時間が許す限り傍にいて、食事はなるべく一緒に食べる。舞台の合間を縫って、ディズニーランドにも行きます。私にとっては子供たちと一緒に過ごすことが息抜きにもなっているんです。でも3人でディズニーに行くと、さすがに騒がれますね。今でもよく、「海老蔵だあ!」と言われてしまう(笑)。

 それから、子供たちと毎晩一緒にやっているのがゲームです。私は「ゲームはやめなさい」とは絶対に言わない。逆に「ゲームの中で目指すものを全うしろ。それまではやめてくれるな」と育てているので、とにかくやり切って欲しい。

 子供が夢中になるゲームの価値や素晴らしさを分からずに、「宿題をやりなさい」と頭ごなしに𠮟ることは無責任ですよ。学校の勉強はもちろん大事ですが、中には大人になってからあまり役に立たない内容もあります。ゲームであっても、自分が好んで時間を費やしていることに対して、調べられるだけ調べて、楽しめるだけ楽しむことは将来的に必ず武器になる。そう考えて育てています。

 今やっているのは「フォートナイト」というオンラインゲームです。基本的にはシューティングゲームですが、メタバース空間を自ら設計することもできる。つまり、プログラミングを学ぶことにもつながるのです。いずれAIが全てを代行する時代が来ますから、メタバースを人間が作れる時代は今後10年間でしょう。それまでの間、プログラミングを学ぶことは良いことだと思います。

 ゆくゆくはオリンピックでeスポーツが正式種目に選ばれる時が来るかもしれません。それに対してアクセスできるような歌舞伎俳優がいてもいいと思います。