今年夏に投開票が行われる東京都知事選の告示(6月20日)まで間もなく4カ月となりました。現職の小池百合子都知事は「出れば3選確実」ともいわれますが、未だ出馬への意向は明らかにせず、国政転身の匂いを嗅ぎとる記事もちらほら出ています。

小池百合子都知事 ©︎文藝春秋

 江東区長選(2023年12月)、八王子市長選(2024年1月)で自民党系候補を後押しして自民党東京都連に恩を売ったかと思えば、オーストラリアに続いて台湾を歴訪。蔡英文総統と頼清徳次期総統と談笑して「国を代表する女性政治家」としてふるまっています。

 選挙直前のパフォーマンスに目を奪われがちですが、現職の政治家なら任期中に何をやったか、その実績でこそ評価されるのが本来的なありかたです。

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 では、小池氏2期目(2020年〜2023年)の3年間の最大の課題は何だったか。忘れられがちですが、新型コロナ対応にほかなりません。感染の「震源地」であり続けた東京都の危機管理が適切だったのか。有事の“指揮官”として、何をしたか、しなかったか。この点は有権者が判断する重要なポイントになると思います。

 ここで、コロナ政治とは何だったのかに迫った拙著『奔流 コロナ「専門家」はなぜ消されたのか』から、2021年1月、第3波の緊急事態宣言をめぐって菅義偉首相と小池知事が対峙した政局を引用したいと思います。国民の健康や生命が危機に瀕しているのに、国と都のトップが責任をなすりつけあった実に興味深い局面だったからです。

菅義偉前首相 ©︎文藝春秋

〈2021年1月4日、首相官邸で記者会見した首相の菅義偉は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県を対象に、2度目の緊急事態宣言を出すことを表明した。都知事の小池百合子に出し抜かれた、菅の完敗であった。

 きっかけは1月2日、都知事の小池が、埼玉県知事の大野元裕、神奈川県知事の黒岩祐治、千葉県知事の森田健作の3人と連れ立って、コロナ対策担当大臣の西村康念じを訪ったことだ。その場で速やかな緊急事態宣言の発出を求めたのである。

 その小池を動かした背景の1つは、おそらく東京都で1353人に上った大晦日の感染者数の急伸である。人々はこの数字に驚き、不安を感じた。こうした不安の高まりに反射的に動く神経回路を発達させているのが、小池という政治家だった〉(『奔流 コロナ「専門家」はなぜ消されたのか』)