天候によっては作業ができない日も
課題はいくつもある。
「輪島港は山が近いので、海底の浅い場所に岩盤があるかもしれません。事前にダイバーの潜水で港内に障害物があるかどうかなど海底の様子は把握しました。しかし、たまった土砂の下は掘ってみないと分かりません。仮に岩盤や岩礁があったとして、グラブバケットで破砕しながら掘り進められるレベルなのか、それとも別の対処が必要なのか、その都度判断していくことになります」と金沢港湾・空港整備事務所の担当者は語る。
浚渫は漁船が接岸している岸壁まで行えるわけではない。岸壁は海底の土砂などが支えになって建っている面もあるので、あまりに近くまで掘ると崩れてしまう。「船が出せる最低限のところまで掘ります。漁船が係留されている場所の水深がたまたま残されていて、自力で走れるようなら深いところまで動いてもらいます。船底が海底についている状態なら、吊り上げるなどして救出します」と担当者は説明する。
だが、日本海は荒れる。天候によっては作業ができない日が多い。
「北東の風が吹くと、港の開口部から港内にうねりが入るので作業はできません。私達の常識では、輪島港に限らず、冬の日本海側でこうした工事をすることはありません。日本海側で海洋工事が始められるのは通常、西高東低の気圧配置が緩む5月のゴールデンウィーク明けとされています」と話す。
それなのに、なぜ工事が始められたのか。
「たまたま地元の喜多組の起重機船が輪島に停泊していて、海底隆起の影響を受けない場所に係留されていました。4月になって天気のいい日が続けば、他の港にいる起重機船を応援で輪島に持って来られます。JVではそうした調整も行うと聞いています」と言う。
約200隻もの漁船の係留場所は…
工事は夏までに終わらせなければならない。
「8月の盆過ぎになると、うねりが港に入って来るので、できれば工事をしたくありません。普通なら工期末は遅くても8月いっぱい。ギリギリで9月というところです。いつまでとは明言できませんが、輪島港の浚渫はそれまでに終わらせられると見込んでいます。漁船の傷みを進ませたくありませんし、漁師の皆さんが少しでも早く漁に出られるようにしたいので、可能な限り早期に救出します」と話す。
こうして漁船を救い出せても、次の問題がある。
まず、約200隻という大量の船の係留場所だ。
石川県漁協の福平専務は「浚渫工事で水深が確保できた場所に移す方針です」と話す。
ただ、港内の岩盤がどうなっているか、まだ分からない状態だ。それによって約200隻もの漁船を係留するスペースが設けられるかどうかが決まる。
漁船の損壊具合も調べなければならない。
「国の事業でサルベージ船を派遣してもらい、吊り上げて船底やプロペラを確認します」と福平専務は語る。