450人規模の教室が満員になった「予備校バブル」時代
──佐藤さんに白羽の矢が。
佐藤 そうみたいです。僕も若かったので、「映像で名が知られたら、カリスマ講師として有名になるかも」という思いもあって、まずは予備校講師のトップを目指そうと。そしたら、数年後に映像授業バブルがくるわけですよ。
──90年代の予備校というと、生徒は団塊ジュニア世代?
佐藤 そうです。だから生徒がケタ違いに多くて、450人くらい入る教室が締め切りになるほどでした。
僕は板書をびっしり書くタイプなんですが、後ろの席だと字が見えないので、オペラグラス持参は当たり前。生徒の中には、前のほうで板書を見たいからって、キャンピングチェアを持ち込む子もいましたよ。
──大学の授業よりすごいですね。
佐藤 はい。まず、僕が教室に入った瞬間に、どよめきが起きるんですよ。「ゆきおが来たぞ!」「今日はどんな面白い話をするんだろう?」みたいなね。
僕は講師の中では“お笑いギャグ系”だったので、授業に入る前に生徒をひと笑いさせたいんですよ。だから教壇に上がる際にわざとコケたりして。
──そうするとまたドッと沸く。
佐藤 はい。あと、野球の応援バット。僕の授業には欠かせない小道具ですね。
──YouTubeでも、バットを必ず持ってますよね。
佐藤 そうそう。これ、便利なんですよ。世界史は史実、つまり「ドラマ」を教えるでしょう? で、歴史が動くときはだいたい、対立や戦いが起きるんですよ。教壇で「こっちの立場はこうで、相手は……」と話すうちに、熱が入っちゃう。
そうなると、黒板のチョークは小さくてダメ。このバットのように、大きく動かせるものが必要なんです。
──教壇でバットを振る?
佐藤 はい。たとえば西洋中世史に《カノッサの屈辱》というエピソードがあります。皇帝が教皇に破門される場面で、僕は必ずバットを振って「おまえは破門だ、ハモーン!」とやります。
このとき、バットは破門を言い渡す教皇の杖ですが、戦争の話では飛行機やミサイルになったりします。歴史は今に続くドラマなので、授業ではつい身振り手振りで動いちゃいますね。40代頃までは、黒板の端から端まで走ったり、教壇の上に乗ったりしてました。