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「食事」「サプリ」という予防法

 では、アイフレイルの予防や進行を抑止するには、具体的にどうすればいいのでしょう。

 近年研究が進んでいるのが「食事」による予防法です。

 アメリカでは加齢黄斑変性を対象とした大規模疫学調査がおこなわれています。その調査では、「前駆病変」が認められ、将来加齢黄斑変性になるリスクの高い人(予備軍)が、「ある機能性成分」を摂取することでリスクを下げられる(病気の進行を遅くする、あるいは病気にならない人の割合を高める)――とする報告を出しています。

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 その成分とは「ルテイン」と「ゼアキサンチン」。これにビタミンCビタミンEなどを加えた成分の有効性は、日本を含む世界中の眼科学会でコンセンサスを得ており、加齢黄斑変性予備軍の人には「サプリメント」として摂取することが推奨されているのです。

 中でもルテインとゼアキサンチンは、出血の元になる新生血管ができるのを抑制する働きを持っているという報告があり、予防目的での摂取は「意味がある取り組み」と言えるでしょう。しかも、これらの成分を食事やサプリメントで摂取することは、加齢黄斑変性だけでなく糖尿病網膜症など、他の疾患にも有効である可能性が示されています。今後のさらなる研究が期待されているところです。

 食品業界ではなく医学の学会が、薬ではないサプリメントを推奨する――というのは極めて珍しいことで、他ではちょっと見られない現象です。もちろんこれらの有効成分は、日常の食事で摂取することが望ましく、それが不足した時に初めてサプリメントとして補充する――というのが本来の姿です。ルテインにしてもゼアキサンチンにしても食事で摂れるならそれに越したことはありません。

ルテインとゼアキサンチンのサプリは学会も推奨(写真はイメージ) ©aflo

 しかし現代人の、特に日本人の食生活を見る限り、食事だけで必要量を摂取するのは困難です。ルテインもゼアキサンチンも、網膜や黄斑をブルーライトや酸化ストレスから守る働きを担っていますが、残念なことに人間の体が自分で作り出すことはできません。食べ物として取り込むしかないのです。

 ルテインはケールやホウレンソウ、ブロッコリー、あるいは卵黄などに含まれる黄色いカロテノイド(色素成分)です。ゼアキサンチンもケールやホウレンソウに含まれるほか、カブの葉やトウモロコシなどにも含まれているカロテノイドです

 昔の日本食であれば、日常の食事からそれなりの量を摂れていたのかもしれません。しかし、私が調べたところ、サプリメントの1回の摂取量当たりのルテインの含有量は10ミリグラムなのに対して、日本人の平均的な食生活で摂れるルテインの量は僅か2ミリグラムにも満たないものでした。

 現代人の食生活を見る限り、青汁やサプリメントで補給したほうがよさそうです。

(取材・構成 長田昭二)

本記事の全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています(小沢洋子「目の老化 学会が太鼓判のサプリあり」)。