トンネルをいくつも抜け、鎌倉を過ぎてしばらくすると見えてきた
逗子駅まで走っているのは、横須賀線だ。逗子にたどり着くひとつ手前には、古都・鎌倉がある。鎌倉も逗子も、おおざっぱにいえば神奈川県南東部、三浦半島の付け根にある町だ。
このあたりは、とにかく山だらけだ。山といっても仰ぎ見るような高峰ではないのだが、それでもまともに開けた平地はごくわずか。そのひとつが鎌倉であり、逗子である。
おかげで、横須賀線は大船駅を出てから終点の久里浜駅まで、短いトンネルを出たり入ったりを繰り返す。鎌倉駅と逗子駅のあいだにも、短いトンネルがある。鎌倉から三浦半島まで通じていた鎌倉七口のひとつ、名越切通のほんのすぐ近く。県道311号線も並んでおり、昔もいまも人の通り道は同じようなところにできるのだ。
トンネルを抜けると、ほどなく逗子駅だ。横須賀線そのものは、さらに横須賀や久里浜まで走っているが、都心方面からやってくる電車はだいたい逗子駅が終着になっている。横須賀や久里浜には京急線も通っているから、そちらを使ってください、とでもいったところだろうか。だから、逗子駅は都心方面から見た横須賀線の事実上の終着駅になっている。
そんな逗子駅は、構内こそ広くて線路が何本も通り、東側には車両基地も持っている。ただし、駅としては実にシンプルだ。
南側に開けた市街地に向かって駅舎がひとつ。すぐに山が迫る北側にも出口はあるけれど、ただ出入りができればいいというくらいのものにすぎない。駅舎は小さくても、ソバ屋にベックスコーヒーと、ひととおり揃っているから、それなりに要衝のターミナルらしい雰囲気は保たれているようだ。
駅前広場に出ると、さすが湘南、空は真っ青に澄み渡り、太陽がさんさんと。ほんのりと磯の香りもするような、しないような……。
大きな駅前広場にはたくさんの人が行き交っていて、金融機関からファーストフード、ほかにも飲食店の類いを中心にいくつも店が取り囲む。この活気に満ちているあたりも、夏の終わりの湘南らしさ、なのでしょうか。