生きづらさは資本主義や政治が関係した“呪い”だった
――最近では「プラスサイズモデル」も登場し、社会の変化も大きいです。
藤井 10年くらい前までは「美」の基準が画一的で、そこから外れることはダメなことだと思っていましたが、今では、ヴィクトリア・シークレットのモデルも多様な人種や体型の方が登場していますよね。
「痩せなきゃ」という生きづらさは、私個人のせいというより、資本主義や政治が関係した“呪い”だったんだと、最近気付いたところです。
――モデルという仕事では、そういった“呪い”と距離を置くことは難しくないですか。
藤井 ルッキズム至上主義といえる面もあるので、苦しさを感じたことはあります。ただ、自分が使う言葉を変えることはできると思っていて。
たとえば、「このパンツは脚が長く見える」ではなく、「このパンツはより脚がきれいに見える」と言うようにしていて。つまり、「脚が長い=良いこと」という価値観を押しつけるのではなく、「そのままのあなたも素敵だけど、よりきれいになるよ」という、個人を尊重する発信をするようにしています。
――これまでの経験から、ダイエット相談もよくありますか。
藤井 「どうしたら痩せられますか?」とDMがよくきてたんですけど、そういうときは、「どうして痩せたいんですか?」って逆に質問していて。
たとえば痩せたい理由が「モテたい」じゃなくて、「どうしてもこのワンピースが着たい」みたいな、自分自身に目標の矢印が向いてるか、自分軸で考えているかが大事だと思うので、そこは発信するようにしています。
今の時代は弱みもどんどんさらけ出したほうがいい
――今年、約7年間務めた『ViVi』専属モデルを卒業されました。
藤井 両親に自分が表紙になった雑誌を見せたら、「嬉しいし素晴らしいけど、これがどう世の中の役に立つか考え続けてね」という反応だったんです。モデルを始めるときも、父から「社会に良い影響を与えられる人になってほしい」と、ぼそっと言われていました。
今の時代は自分が弱みだと思っていることをどんどんさらけ出したほうが、結局自分にとっても、周りの人にとっても良いことが多いと思っていて。私も、摂食障害になったからこそ自分の体と向き合えたし、食育インストラクターの資格も取ったので、結果オーライなんです。
写真=深野未季/文藝春秋
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