「やっぱり黒塗りのないものを出してほしい」

 ことの真相を知るために今回の上告断念は大きな一歩になる。次はいよいよ本丸の情報開示に話が進む。文書はどこまで黒塗りなしで出されるか?

雅子さん 私は上告断念っていうのは本当に嬉しかったんです。もう一つお願いしたいのは、やっぱり黒塗りのないものを出してほしい。もうそれだけです。

眞紀子さん すべからく政治の問題なんですよね。この事件の原点は国民のものである国有地を森友学園に安く払い下げたことです。もうシンプルなことなんで。

ADVERTISEMENT

安倍首相(当時)の答弁からすべては始まった ©︎時事通信社

郷原さん なぜここまで隠したいのか。当時、安倍(晋三)首相が「私や妻が関わっていたら総理大臣も国会議員も辞める」と言いました。そこから資料を廃棄したり決裁文書を改ざんしたり、一連の話が始まる。だから発端になったのは何なのかを知りたいっていうことなんですよね。

眞紀子さん 財務大臣が、たくさんの書類が検察から財務省に戻ってきてると言いましたから、全部出してもらおうじゃないですか。すべて出すのが当たり前です。

雅子さん 今回、石破(茂)首相がせっかく上告断念という決断をしてくれたんだから、今後どの範囲までオープンにするのかっていうことに関してもしっかりリーダーシップを発揮してほしいです。

国家公務員だった息子を自死で亡くした男性の切ない姿を

 雅子さんの念頭には、自分と同じように真相を知りたいと悩み苦しんでいる自死遺族のことがある。裁判がきっかけで知り合ったある男性は、国家公務員だった息子を自死で亡くした。しかしパワハラがあったという訴えを職場が認めず、真相がわからないままになっている。自宅を訪れた時の切ない姿が思い浮かんだ。

雅子さん 自死遺族の方で情報開示を(請求)しても全然出ない方がいるんですね。裁判すらできない方が私の判決を喜んでくれて連絡くださったりするので、そういう方たちの希望になれたらいいなと思って。こうやって国が出したくないものも、頑張れば出してくれることがあるんですよって。

眞紀子さん 大変な人生ですね。お体気をつけて頑張って。頑張ってって言い方、無責任であんまり好きじゃないんですけどね。ご主人様がお元気だったらなんて言うんでしょう。「雅子、よく頑張ったね。こんなしぶとい女だと思わなかった」っていうかな(笑)。

雅子さん 何より今ここで眞紀子さんとお話ししていることを、「お前えらいことになってるな」って言いますよ。本当に私は大事にしてもらっていたので、少しでもお返しができたら幸せです。

決意を新たに手を合わせる3人

 情報開示請求に対しては原則30日以内に決定することになっている。正当な理由がある場合は30日以内に限り延長ができ、文書が著しく大量の場合は例外的な延長も可能とされている。まずは財務省がどう回答してくるのかが焦点だ。

 ◆◆◆

 現在配信中の「週刊文春 電子版」および2月13日(木)発売の「週刊文春」では、森友事件の取材を続けるフリー記者・相澤冬樹氏が、『赤木雅子さんから石破首相へのメール 森友裁判上告断念で次は〈黒塗りのないものを〉』と題し、赤木雅子さんが上告断念を知った瞬間や、石破首相とのメールのやり取り、文書開示に関する今後の焦点などについてレポートしている。

 また、この3者の鼎談については、郷原信郎弁護士のYouTubeチャンネル「郷原信郎の『日本の権力を斬る!』」で公開されています。

文藝春秋が提供する有料記事は「Yahoo!ニュース」「週刊文春デジタル」「LINE NEWS」でお読みいただけます。

※アカウントの登録や購入についてのご質問は、各サイトのお問い合わせ窓口にご連絡ください。