アカデミー賞にノミネートされて
——映画制作中に妊娠、出産をされ、現在も子育てをしながら映画祭に参加されています。ご家族の協力があるのでしょうか。
山崎 今回は撮影が終わる頃に出産直前となり、息子は現在2歳半です。負担はあったかもしれないですが、普段とほぼ変わらぬペースで仕事ができました。だからこそ自分にとっては大事な作品となり、親としての観点も映画に入れられたので、作品にプラスになったと思います。働きながら子育てをするのは、世界では当たり前のことです。日本では「女性が男性に理解を求める」と考えがちですが、私はそういうスタンスにありません。もちろん出産前にわからなかった状況を、家族や周りの人と一緒に乗り越えています。母親もやりたいし、映画監督もやりたい、それを実現するために正解がわからない中で工夫をし、葛藤しながらも今ここにいる、それが事実かと思います。
——短編がアカデミー賞にノミネートされたのは快挙でしたが、どのように捉えていますか。
山崎 高校生の時にアカデミー賞が毎年行われていたロサンゼルスの劇場にツアーで行って、「いつかここに来られるのかな」「おばあちゃんになった頃に一回かな」と思っていたのが、実際に来られて自分としては、なんかもう……。ただ、そのことより、それが持つ意味について考えます。今回、伊藤詩織さんと共にノミネートされましたが、日本人監督が日本を題材にして撮ったドキュメンタリーがノミネートされたのは、長編と短編ともに初めてです。これまで日本に関するドキュメンタリーは、海外にいる人が日本に少し来て、何かを撮って発信するという時代が続いてきました。これからは自分たちで自分たちの日本のストーリーを、世界に発信する時代だと思います。この10~15年位、世界中でドキュメンタリーが重要な地位を占めるようになりました。新たな時代の中で世界を目指す日本人のドキュメンタリー監督が増えてほしいし、自分はその一人でしかありませんが、仲間やコミュニティを作っていきたいと思ってます。
やまざき・えま/イギリス人の父と日本人の母を持ち、東京を拠点とするドキュメンタリー監督。神戸生まれ。19歳で渡米し、ニューヨーク大学映画制作学部を卒業後、エディターとして携わった作品はHBO、PBS、CNNや世界各地の映画祭で放送、上映された。長編作品に『モンキービジネス:おさるのジョージ著者の大冒険』(2017年)、『甲子園:フィールド・オブ・ドリームス』(2019年)がある。2024年、ニューヨーク・タイムズに監督としての紹介記事が掲載される。『小学校~それは小さな社会~』短編版がOp-Docs(ニューヨーク・タイムズ運営の動画配信サイト)に選出され配信された。日本人の心を持ちながら外国人の視点が理解できる立場を活かし、人間の葛藤や成功の姿を親密な距離で捉えるドキュメンタリー制作を目指す。
『小学校~それは小さな社会~』
シネスイッチ銀座ほか全国順次公開中
配給:ハピネットファントム・スタジオ
監督・編集:山崎エマ
2023年/⽇本・アメリカ・フィンランド・フランス/カラー/99分/5.1ch
© Cineric Creative / NHK / Pystymetsä / Point du Jour
公式サイト shogakko-film.com
公式X @shogakko_film 推奨タグ:#小学校それは⼩さな社会
公式Instagram shogakko.film
プロデューサー:エリック・ニアリ
撮影監督:加倉井和希
録音:岩間翼 エグゼクティブ・プロデューサー:安田慎 杉江亮彦 國實瑞恵
コープロデューサー:ウーティ・ロウス リュック・マルタン=グセ 金川雄策
音楽:パイビー・タカラ
ミキサー:アンドリュー・トレイシー
共同編集:井手麻里子 鳥屋みずき
特別撮影:ジョン・ドニカ
カラーリスト:佐藤⽂郎
製作・制作:シネリック・クリエイティブ
国際共同製作:NHK
共同制作:Pystymetsä Point du Jour YLE France Télévisions
協力:世田谷区 世田谷区教育委員会
製作協力:鈍牛倶楽部
配給:ハピネットファントム・スタジオ
宣伝:ミラクルヴォイス
宣伝協力:芽 inc.
