「南大塚」から5分も歩かないうちに国道が見えてきた
そうすると、南大塚駅前から5分と歩かずに国道16号に出た。首都圏の外縁をぐるりと回る大国道、通行量もなかなかに多いのだが、安比奈線もかつては国道16号を跨いでいたのだ。だから、廃線跡の空き地も国道16号を挟んでさらに北に続いてゆく。
国道16号を跨いだ先も、安比奈線の廃線跡は両サイドに民家がピタリと接している。いつまでも中に入らずに遠回りをしてばかりいても仕方がない。
かといって勝手に廃線跡に侵入するわけにもいかないので、ここからは西武鉄道の広報氏に同行を願うことにした。偉そうな言い方をすれば、特別な許可を得て、というヤツだ。
そんなわけで、ここから先の廃線跡ウォークは文字通りの廃線跡をゆく。とはいえ、訪れた日はあいにくの雨模様。定期的に草刈りはしているというが、地盤まで整えられているわけではないから、水をたっぷり含んだ廃線跡はなかなかに歩きにくい。
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無事に廃線跡に立ち入ることを許された著者。雨模様で滑りやすい廃線路を進んでいくと、森の中に消えていくレールの先で「とある光景」を目にすることになった――。後編に続く。
写真=鼠入昌史

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