ガバナンスがまるで機能していない

 そんな山田氏は、なぜフジに天下ったのか。フジ関係者が打ち明ける。

「放送を巡って問題が起こった際、テレビ局は総務省から追及される立場。それゆえ、放送行政のトップである情報流通行政局長の経験者は調整役として貴重な存在です。山田氏は三顧の礼で迎え入れられ、フジ・メディア・ホールディングスの取締役の他、フジテレビジョンの社外取締役も兼務。一般的に、取締役の年収は3000万円前後です」

 だが、「今回、彼女は全く機能していなかった」と言葉を続ける。

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「放送事業に精通し、情報流通行政局長の経験もある山田さんは、同局のコンプライアンス遵守のお目付け役としての任務も求められていた。しかし、中居さんをめぐるトラブルにおいて、まるでガバナンスが機能していないことを露呈してしまった。港浩一社長は一昨年6月に事態を知っておきながら、なぜ中居正広さんに適切な調査をせず、番組出演を続けさせたのか」

フジテレビ ©時事通信社

中途半端な調査委員会の設置

 ◇

 1月17日、フジテレビの港社長が記者会見を行った。

「現在まで弊社から説明ができていなかったことについて、おわび申し上げます」

 冒頭で港社長はそう述べ、次のように続けた。

「第三者の視点を入れて改めて調査を行う必要性を認識しましたので、今後、第三者の弁護士を中心とする調査委員会を立ち上げることとしました」

 港社長は自身も調査対象になると述べたが、この「調査委員会」について社内では異論が噴出している。

1月17日、記者会見するフジテレビの港浩一社長 ©時事通信社

「本来であれば、『第三者の弁護士を中心とする調査委員会』ではなく、日弁連のガイドラインに基づく第三者委員会の設置が求められる事案。第三者委員会の場合、完全に独立性が担保され、会社の意思が調査結果に影響を及ぼすことはない。一方、調査委員会の場合は、フジというクライアントの意向が弁護士事務所に働く可能性があり、不透明感が漂う。当初は政治部出身の取締役を中心に『調査はいらない』の一点張りだったが、折衷案として中途半端な調査委員会の設置という結論に至ったのです。結局、お手盛り調査に終始するのではないか、という懸念が渦巻いています」(フジ幹部)