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米朝首脳会談・共同声明
「トランプ大統領は北朝鮮に安全の保証を与えることを約束し、金委員長は朝鮮半島の完全非核化への確固で揺るぎのない約束を再確認した」

日本経済新聞 6月12日

 首脳会談の最大の焦点は北朝鮮の非核化だ。これまでの事前交渉では米側が「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)の早期実現を要求する一方、北朝鮮は「段階的な非核化」を主張してきた。

 しかし、発表された共同声明には、「金委員長は朝鮮半島の完全非核化への確固で揺るぎのない約束を再確認した」とあったが、CVIDについては触れられず、北朝鮮の非核化に向けた具体的な道筋も示されなかった。反面、「トランプ大統領は北朝鮮に安全の保証を与えることを約束する」と明記された。国際関係アナリストの北野幸伯氏は、「北朝鮮が『完全非核化』をし、その見返りに米国が北朝鮮の『体制保証』、つまり金正恩体制の継続を保証するという部分」こそが「ディールの核心」と指摘している(ダイヤモンド・オンライン 6月14日)。

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 トランプ氏は会談前、「完全な非核化の意思が確認できなければ、会談を中座する」と強気の姿勢をとっていたが、結果的に曖昧な内容の文書に合意したことになる。今回の首脳会談について、トランプ氏の「敗北」であるという批判も多いが、両国が挑発し合うより対話するほうが良いとして評価する声もある。新米国安全保障センター(CNAS)のアジア太平洋安全保障プログラム担当ディレクター、パトリック・クローニン氏は、「長年の敵国同士による初の外交上の首脳対面を実現させた会談を10と評価する」と述べた(ブルームバーグ 6月13日)。

ドナルド・トランプ 米大統領
「彼は才能ある人物だ」

TBS NEWS 6月13日

 会談後のトランプ氏は非常にご満悦で、正恩氏について「彼は才能ある人物だ」と惜しみない賞賛を送った。

 会談後の記者会見では記者から「家族を殺し人民を飢えさせアメリカ人大学生の北朝鮮での死にも責任があるはずの金正恩氏に対し、なぜやすやすと『とても才能がある』などと言えるのですか?」と詰問されたが、「26歳で政権を託されて、しっかりやるなんて、なかなかできない」と一般論でお茶を濁した。

©getty

ドナルド・トランプ 米大統領
「『戦争ゲーム』は挑発的だし、中止することで費用を節約できる」

毎日新聞 6月13日

 大きな驚きを与えたのが、記者会見でのこの発言である。トランプ氏は米韓軍事演習を「挑発的」な「戦争ゲーム」と呼んで、将来的な中止を示唆したのだ。北朝鮮は米韓軍事演習を「挑発的」と強く批判してきた。その主張にトランプ氏が乗ったということになる。

 米政府はトランプ氏の発言を受けて、8月に予定されていた定例の米韓演習「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン」の中止を近く発表する方針を決めた(朝日新聞 6月15日)。

ドナルド・トランプ 米大統領
「(非核化のコストについては)韓国と日本が北朝鮮を大いに助けてくれると思う」

日本経済新聞 6月13日

 トランプ氏は記者会見の中で、北朝鮮の非核化のコストを負うのは韓国と日本が中心になると主張した。「米国が支援する必要はないだろう」とも発言している(産経ニュース 6月12日)。ジャーナリストの田原総一朗氏は「トランプ氏は日本に核廃棄に伴う経済支援を強硬的に要求してくる可能性がある」と指摘している(日経ビジネスONLINE 6月15日)。