
灼熱の名古屋場所。初日恒例の理事長挨拶での、八角理事長の言葉だ。
「新しく完成しましたこの素晴らしいIGアリーナでこけら落としとなります。力士たちはこの名古屋の地、IGアリーナで新たな歴史を刻むにふさわしい熱戦を繰り広げてくれることと存じます」
これまで約60年に渡り愛知県体育館で開催されていた大相撲が、国内最大級の1万7000人収容のIGアリーナで賑々しく初日を迎えていた。大相撲本場所としての座席数は7800。その狭さに改善要望の声が大きかった桝席は、1.3倍の広さに。5階建てドーム型施設で、天井の高さは30メートルにも及ぶ。たっつけ袴姿で観客席に弁当や土産物を運ぶ、相撲案内所の出方さんが苦笑する。
「館内が広すぎてね。歩数計を見たら3万8000歩も歩いていたんだよ!」

御年94歳にして連日新アリーナで取材に勤しんだ、元NHKアナウンサーの杉山邦博氏が秘話を聞かせてくれた。
「私は会場が愛知県体育館に移る前の“金山体育館”を知る数少ない人間です。名古屋場所がまだ本場所に昇格する前、昭和29(1954)年に“準本場所”として金山体育館で試験的に始まりました。昭和33年から本場所となり、冷暖房などはもちろんない。花道には大きな氷柱と今でいうミスト――噴霧器のようなものが設えてあり、記者たちはみんな短パンにランニング姿で取材をしていたものです」
ちなみに金山体育館での初の本場所を制したのは初代横綱若乃花。愛知県体育館に移った昭和40年の名古屋場所では、横綱大鵬が優勝賜杯を抱いたという。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
初回登録は初月300円・1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
電子版+雑誌プラン
18,000円一括払い・1年更新
1,500円/月
※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事が読み放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年7,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 塩野七生・藤原正彦…「名物連載」も一気に読める
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2025年9月号

