46年ぶりの快挙! 「高砂トリオ」の躍進

第56回

エンタメ スポーツ

 この九月秋場所、高砂部屋から3人の十両力士が土俵に上がる。石崎改め朝翠龍と、モンゴル出身の朝白龍が新十両に。そして元大関の朝乃山が再々十両昇進を決めたのだ。

 “十両同時トリプル昇進”は、なんと46年ぶりの珍しい慶事でもあるとか。なかでも朝乃山の動向は、がぜん注目を浴びていた。それというのも、2021年、コロナ禍のなかで相撲協会のガイドライン違反により1年間の出場停止処分を受け、番付は大関から三段目まで一気に陥落。復帰後は着実に番付を戻し、24年5月には三役の小結に復帰した。「さあ! 再度大関に挑戦だ」と意気込むなか、膝の大けがで5場所連続休場し、またしても番付を三段目まで落としてしまっていたからだった。

 一時は横綱昇進を期待されていたはずの朝乃山も、すでに31歳。喜びもつかの間、笑顔を引き締めていう。

「とりあえずホッとはしましたが、喜んでいる場合ではないです。あくまでも通過点ですから」

 そんな朝乃山との同時昇進を自分のこと以上に喜ぶのは、兄弟子の苦労を間近で見続けていた朝白龍だ。

新十両昇進を果たした朝白龍(右)と朝翠龍 Ⓒ時事通信社

「その頑張りには刺激を受けていました。よい稽古相手になってくれましたし、元大関ですから、それまでもいろんなアドバイスをもらっていました」

 そう人懐こい笑顔で語る朝白龍は、朗らかな性格で高砂部屋のムードメーカーでもある。さらに、もうひとりの新十両力士である朝翠龍もまた、特筆すべき存在だ。横綱大の里とは日体大時代の同期生。卒業後は養護学校の教員を経て、大の里ら日体大勢の活躍に刺激を受けて角界入りを決意した。兄も幕内で活躍する小兵力士の朝紅龍であり、兄弟関取の誕生となった。

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source : 文藝春秋 2025年10月号

genre : エンタメ スポーツ