老人ホームから見守る土俵の熱気

第52回

エンタメ スポーツ
部屋開きを迎えた元大関琴奨菊の秀ノ山親方 Ⓒ共同通信社

 現在、相撲部屋の数は45を数える。

 かつて、元大関琴風の先代尾車親方が、感嘆していたことがあった。

「今の時代、少子化も進んで新弟子スカウトにも苦労する。若い師匠たちは、それでも夢を持って相撲部屋を持つのです。金銭面でも大変だろうし、その情熱はたいしたものですよ」

 先の4月20日、元大関琴奨菊の秀ノ山親方が、東京の下町、墨田区東向島で晴れやかに部屋開きを催した。すでに昨年には佐渡ヶ嶽部屋から独立し、鉄筋コンクリート5階建ての部屋を新築して始動していたが、諸事情からお披露目はこの時期に。相撲界では珍しい、黒地の板に赤い文字が際立つ、漆塗りのモダンな部屋看板が特徴だ。

「地元の方々に快く迎えてもらっています。今後も地域に支えてもらえる部屋を目指したいです」

 そう新米師匠は満面の笑みを浮かべる。昔ながらの商店街もほど近く、部屋の横には、常に行列ができるほどに格安な野菜卸売店があり、日々のちゃんこ作りにもありがたい。野菜やフルーツの差し入れもいただくそうだ。

Ⓒ時事通信社

 何より特筆すべきは、特別養護老人ホームが隣接していることだろう。秀ノ山親方の現役時代からの後援者が施設の理事長を務める縁で、その敷地の一角を借り受けているのだという。稽古場の扉を開放すれば、隣のホームから、入居者の方々が朝稽古を見られる造りとなっている。一般人にはなかなか見学する機会がない相撲部屋の朝稽古。ひ孫のような年齢の、10代ばかりの7名の力士たちの奮闘を窓越しに見守り、その成長ぶりを入居者のみなさんは毎日楽しみにしているのだとか。

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source : 文藝春秋 2025年6月号

genre : エンタメ スポーツ