厳しくない稽古は意味がないでしょう?
今年1月の初場所中に現役引退を表明した元横綱照ノ富士(33)。この6月には、それまでの師匠であった元横綱旭富士の定年退職により伊勢ヶ濱部屋を継承し、「十代伊勢ヶ濱親方」となった。
力士だけでなく、行司、呼出など総勢46名の大所帯は角界一。名門部屋をモンゴル出身の若き師匠が率い、その重責を担っている。
伊勢ヶ濱を襲名してすぐ、墨田区にある仮住まいの相撲部屋に引っ越しを済ませました。間もなく大阪での夏合宿に行き、そのまま7月の名古屋場所のために現地入り。横綱時代も多忙でしたが、今が人生で一番忙しい時期かもしれません。
名門の伊勢ヶ濱部屋を継承し、プレッシャーはないかと訊かれますが、稽古指導の面では現役時代からずっと若い子たちに指導をしていますから、そこに変わりはありません。ただ、伊勢ヶ濱は横綱照國、大関清國、そして横綱旭富士と代々受け継がれてきた名跡です。弟子たちを今まで以上に強くするのは当然のこと。自分で一から部屋を興したわけではなく、“出来ている状態”で受け継いでいますから、維持しながらも、今まで以上に発展させていこうと思っています。

現在は宝富士、尊富士、伯桜鵬、熱海富士、翠富士、錦富士、名古屋場所で新入幕した草野らの関取衆がいます。今場所でもそれぞれが存在感を示してくれましたが、私がやるべきことは、早く次の関取を育てること。そして、今は三役力士がひとりもいないので、三役を育てる。そこからが“勝負”なのではないかと思います。
数学オリンピックでメダル
教える内容は弟子一人ひとりに応じて変わりますが、全員に共通して言えるのは「明確な目標を持つこと」の大切さ。私自身、幼少期から横綱時代に至るまで、常に何かしらの目標を立てていました。
子どもの頃の私は、両親に「勉強を頑張りなさい」と言われて育ちました。両親が子どもの頃のモンゴルは社会主義の時代で、勉強に専念できる環境ではなかったそうです。そのため子どもたちには勉強をさせたいという思いでいてくれたのでしょう。私自身は勉強が好きだったわけではありませんが、数学は得意でした。だから「数学の大会でメダルを獲ったら、両親は喜んでくれるんじゃないか」と、目標を立て、ウランバートルで開かれた数学オリンピックで何度かメダルを獲得することができました。
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