文藝春秋は1923(大正12)年に創刊し、30年後の1953(昭和28)年に写真部が創設されました。以来、昭和天皇をはじめとした皇室から、文豪、銀幕のスターまで、同部のカメラマンが多くの著名人を撮り下ろしています。


過去に撮影した写真は現在、データ化されていますが、写真資料室にはデータ化される前の写真が紙焼きで保管されています。灰色の重厚なキャビネットには、モノクロの古い写真がぎっしり。それらを眺めていると、まるで写真が撮られたその時代へタイムスリップしたような、不思議な感覚を覚えます。


今年は戦後80年です。そこで今回、昭和を映し出してきたモノクロ写真の一部をカラー化し、当時の雰囲気を蘇らせてみようと試みました。黒澤明や手塚治虫、森英恵など日本を代表するかたがたの写真です。

カラー化には、早稲田大学理工学術院の石川博教授にご協力いただきました。石川先生は同研究室が開発した人工知能技術を用いて、数々の写真のカラー化に成功されていらっしゃいます。石川先生いわく「AIは木や空、海などシンプルでわかりやすいものの色付けは得意ですが、衣服など特定の商品や色彩が複雑なものは忠実に再現するのが難しい。まだ開発途中の技術なので、その点はご理解いただきたい」とのこと。それでも、色付けされた写真を見てみたいと伝えたところ、快く引き受けてくださいました。
仕上がりは誌面にある通り。着色されたことでリアルさが増し、ご本人たちの息遣いまで聞こえてきそうです。特に、黒澤明がトレードマークであるサングラスを外した一瞬は、つい最近のことのように見えます。電信柱の質店の看板や、重厚な応接セットなど背景も見ものです。
ぜひ、文藝春秋8月号「戦後80年記念グラビア よみがえる日本の顔」で、細部までじっくりご堪能ください。また、翌9月号(8月8日発売)でも同様のカラー化企画を実施しています。あわせてお楽しみください。
(編集部・倉林)
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