800度の炎で三日三晩休みなく…極寒の奥出雲「たたら製鉄」で感じた“すさまじい情熱”

vol.101

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 本誌5月号に掲載したグラビア記事「奥出雲に残る“たたらの炎”」では、日本美術刀剣保存協会が運営する「日刀保(にっとうほ)たたら」(島根県・奥出雲町)を訪ね、古代から連綿と受け継がれてきた「たたら製鉄」の様子を撮影しました。

 長い歴史を持つたたら製鉄は、神事としての性格も持っており、原則、非公開です。2月上旬、大雪に見舞われた日に、現地取材をスタートさせました。

「編集部のみんなは、フリーフロー(飲み放題)で美味しい中華を楽しんでいるのに……」

 奥出雲町に到着早々、恨めしそうにしていたのは社内きっての美食家として知られるKデスクです。この日、東京では、人事異動に伴い、本誌編集部の歓送迎会が開かれていました。会場はKデスクがこよなく愛する中華料理店です。Kデスクと私も参加する予定でしたが、撮影当日はあいにくの大雪予報。飛行機の運休を見越して、奥出雲に前乗りしたため、送別会には参加できませんでした。案の定、現地に到着すると、吹雪に見舞われ、30センチを超える雪が積もっていたのです。

 テンション下がり気味のKデスクと共にまず向かったのは、金屋子神社です。ここは中世から製鉄業者の信仰を集めてきた「たたら場の守護神」。神職はたたら場で安全操業の祈祷と製鉄の技術指導を行ってきました。

大雪のなかの金屋子神社 ©文藝春秋

 今回の記事では欠かせない伝統ある神社ですが、道中、猛吹雪によるホワイトアウトで視界は遮られ、道路は凍結して真っ白。神社手前の坂道ではレンタカーがスタックし、抜け出すのに20分ほどかかりました。どうにか到着した社殿では、“たたらの神様”である金屋子神を描いた「金屋子神図」(同社蔵)を撮影。掛け軸には前近代の人々がたたらを吹く姿も描かれ、同社が持つ歴史の豊かさを感じさせられました。心なしか、Kデスクも元気を取り戻したようです。

金屋子神が描かれた軸 ©文藝春秋

 翌日はいよいよ「日刀保たたら」の取材です。この日もやはり大雪で、たたら場の敷地内も一面雪景色。作業員の方が、車高が3メートルはあろうかという除雪車を自ら運転して、除雪を行っていました。

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